ピッツバーグ交響楽団

ピッツバーグ交響楽団

ピッツバーグ交響楽団（Pittsburgh Symphony Orchestra）は、アメリカ合衆国ペンシルベニア州の主要都市、ピッツバーグを拠点とする、同国を代表するオーケストラの一つです。その歩みは19世紀末に始まり、幾度かの困難を乗り越えながら、世界的な評価を確立してきました。

楽団の起源は1895年にさかのぼります。ピッツバーグ芸術協会によって創設され、翌1896年には最初の演奏会を開催しました。初代の指揮者にはフレデリック・アーチャーが就任し、楽団のアンサンブル能力を高めるべく、ボストン交響楽団から多くの有能な奏者を引き抜くなど、基盤作りに尽力しました。1898年にアーチャーが楽団を去った後、ヴィクター・ハーバートが後任を務め、さらに1904年にはエーミール・パウアが指揮台に立ちました。このパウアの時代には、エドワード・エルガーやリヒャルト・シュトラウスといった海外の著名な作曲家兼指揮者を客演に招くなど、国際的な交流も始まりましたが、残念ながら1910年に財政的な問題から一度目の解散を余儀なくされました。

しかし、ピッツバーグの地からオーケストラの灯が完全に消えることはありませんでした。1926年には、熱意ある人々によってピッツバーグ交響楽団は再結成されます。再出発にあたっては、楽団員が無報酬でリハーサルに参加し、さらには翌年の定期演奏会を開催するための資金を自分たちで出し合うという献身的な努力が見られました。楽団の本格的な復興に向けては、1937年にオットー・クレンペラーが短い期間ながら客演指揮者として参加し、その再建に大きな役割を果たしました。

ピッツバーグ交響楽団を国際的な水準へと押し上げたのは、1938年から1948年まで音楽監督を務めたフリッツ・ライナーの功績が大きいと言えるでしょう。「オーケストラ・ビルダー」として名高いライナーは、その厳格な指導によって楽団の演奏能力を飛躍的に向上させ、さらに精力的な録音活動を行うことで、ピッツバーグ交響楽団の名声を世界中に知らしめました。

ライナーの後、ヴィクトル・デ・サバタが客演指揮者として短期間活動したのち、1952年から24年間という長期にわたり音楽監督を務めたウィリアム・スタインバーグの時代には、楽団は芸術面でも財政面でも比類ない安定期を迎えます。スタインバーグによる堅実な運営と高い音楽性により、ピッツバーグ交響楽団はアメリカ国内における確固たる地位を築き上げました。

スタインバーグの退任後も、楽団はアンドレ・プレヴィン、ロリン・マゼール、マリス・ヤンソンスといった世界的な名指揮者を音楽監督に迎え、その水準を維持、発展させてきました。2008年からは、マンフレート・ホーネックが音楽監督を務め、新たな時代をリードしています。

本拠地については、長年にわたりオークランド地区にあったシリア・モスク（Syria Mosque）として知られる建物を活動の拠点としていましたが、1971年9月からはダウンタウンに位置するロウズ・ペン・シアター（Loew's Penn Theater）を改修したホールに移転しました。この改修は、食品会社ハインツ社のH.J.ハインツ2世氏の多大な資金援助によって実現し、ホールの名称もハインツ・ホール（Heinz Hall）と改められました。

特筆すべき出来事として、2004年には、アメリカのオーケストラとしては初めて、ローマ教皇への御前演奏を行いました。これはヨハネ＝パウロ2世が最後に耳にした国際的な水準のオーケストラの演奏であった可能性が指摘されています。演奏プログラムはマーラーの交響曲第2番「復活」を中心とするものであり、ヨハネ＝パウロ2世は個人的にアンコールを希望したという感動的なエピソードも残されています。

このように、ピッツバーグ交響楽団は波乱に富んだ歴史を経て、フリッツ・ライナーやウィリアム・スタインバーグをはじめとする名指揮者たちに導かれ、アメリカだけでなく世界的に認められる主要オーケストラとしての地位を確立し、現在も活発な活動を続けています。

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