ピティヴィエ (菓子)

ピティヴィエとは

ピティヴィエは、フランスのピティヴィエ地方で作られる伝統的なパイ菓子で、フランスを代表する焼き菓子のひとつです。ピティヴィエという名前は、地方名よりもお菓子の名前として広く知られています。このお菓子には大きく分けて2つの種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。

ピティヴィエ・フィユテ

一般的に「ピティヴィエ」と呼ばれることが多いのが、このピティヴィエ・フィユテです。薄く伸ばしたパート・フィユテ（バターを折り込んで作るパイ生地）に、クレーム・ダマンド（アーモンドクリーム）やクレーム・フランジパーヌを広げ、さらに薄く伸ばしたパート・フィユテで覆って焼き上げます。特徴的なのは、焼き型やパイ皿を使わずに、表面に中心から放射状にうねるような筋模様が施される点です。この模様は、見た目の美しさだけでなく、火の通りを均一にし、生地が歪むのを防ぐという実用的な役割も果たしています。クリームが入っていないパイ生地のみのものは、ガレットと呼ばれます。

ピティヴィエ・フォンダン

もう一つのピティヴィエは、ピティヴィエ・フォンダンです。こちらは、アーモンドを使ったバター生地に糖衣がけ（フォンダン）をして飾ったものです。ピティヴィエ・フィユテとは異なり、模様はありません。

ピティヴィエ・サレ

また、お菓子としてではなく、パイ料理としてピティヴィエ・サレというものも存在します。

歴史

ピティヴィエ・フォンダンの方が、ピティヴィエ・フィユテよりも歴史が古いとされています。

ピティヴィエ・フォンダンの誕生

古代ガリア時代、ピティヴィエの町は良質な小麦粉の産地として知られていました。ガリアが古代ローマの属州となった時代には、イタリア半島で豊富に採れるアーモンドとピティヴィエの小麦粉が交換されるようになり、ガリアの人々が小麦粉だけで作っていたガレットにアーモンドを加えて作ったのが、ピティヴィエ・フォンダンの始まりとされています。ただし、古代には糖衣がけはされていませんでした。

ピティヴィエ・フィユテの誕生

ピティヴィエ・フィユテの起源には諸説ありますが、17世紀の画家クロード・ロランが菓子職人の見習いをしていた頃、バターを入れ忘れて後から折り込んだことが、パート・フィユテの始まりという説があります。しかし、この製法は普及せず、アントナン・カレームやM.Feuilletによって完成されました。M.Feuilletがパイ生地の中央にピティヴィエ・フォンダンを置き、周辺を摘んで包むように焼いたものがピティヴィエ・フィユテの原型とされています。この時点では、表面に模様は施されていませんでした。

表面の模様の由来

ピティヴィエ・フィユテの表面の模様は、フランス王シャルル9世がピティヴィエの近くで強盗団に捕えられた際に、盗賊団が王にパテを食べさせたところ、その美味しさに感動したシャルル9世が、釈放後にピティヴィエの町の職人に王家御用達の特権を与えたというエピソードに由来するとされています。それ以降、ピティヴィエの町の職人は、パテの表面に王の馬車の車輪を模した筋をつけるようになりました。ただし、シャルル9世の時代には、まだパイ生地は存在せず、粉を練って作ったものに模様をつけていたと考えられています。18世紀になって、ピティヴィエ・フィユテが作られるようになり、模様も引き継がれ、中身もクリームへと変化していきました。

ピティヴィエ・フィユテの模様

ピティヴィエ・フィユテの表面の模様は、見た目の美しさだけでなく、火の通りを均一にし、焼いた時に生地が歪むのを防ぐという実用的な機能も兼ね備えています。模様をくっきりと焼き上げるのは、菓子職人の腕の見せ所とされています。

類似する菓子

ガレット・デ・ロワ

ガレット・デ・ロワは、ピティヴィエとよく似たお菓子です。使用するクリームの量や表面の模様は異なりますが、ほとんど同じ構造をしています。ただし、ガレット・デ・ロワには「フェーヴ」と呼ばれる陶器製の小さな人形が入っており、公現祭の日に食べるお菓子であるのに対し、ピティヴィエは通年で食されています。

ピティヴィエは、その歴史と多様な形を持つ、フランスを代表する魅力的なお菓子です。

もう一度検索