ピナコサウルス

ピナコサウルス：鎧をまとったアジアの恐竜

ピナコサウルス（Pinacosaurus、「板のトカゲ」の意味）は、約8000万～7500万年前の白亜紀後期に、現在のモンゴルから中国にかけて生息していた曲竜類です。中程度の大きさで、体長は約5メートルに達しました。他のアンキロサウルス科と同様に、尾の先に骨質のこぶを持っており、これは捕食者から身を守るための武器として使われたと考えられています。

特徴的な鼻の穴

ピナコサウルスの最も際立った特徴は、鼻孔の近くにある2～5個の小さな穴です。これらの穴の役割はまだ解明されていませんが、ピナコサウルス属の特徴となっています。幼体の化石では、これらの穴が5つ確認された例もあります。

発見の歴史

ピナコサウルスの化石は、1920年代にアメリカ自然史博物館がモンゴルのゴビ砂漠で行った探検で発見されました。最初の標本は、ジャドフタ層の「炎の崖」と呼ばれる場所で見つかりました。このホロタイプ標本は、部分的に損傷した頭骨、顎、皮骨で構成されています。

ピナコサウルスは、アジアで最もよく知られた曲竜類の一つであり、完全な骨格、複数の頭骨、幼体の化石群など、これまでに15の標本が発見されています。幼体の頭骨は、テレサ・マリヤンスカによって詳しく研究されました。

分類上の位置づけ

ピナコサウルスのタイプ種はP. grangeriです。かつては別の種と考えられていたP. ninghsiensisやHeishansaurus pachycephalusも、現在ではP. grangeriのシノニムとされています。また、かつて堅頭竜類と考えられていたSyrmosaurus viminicaudusも、ピナコサウルスの疑問名とされています。

P. mephistocephalusは、かつては別の種と考えられていましたが、その後の研究で真皮性の角と鼻孔の特徴に基づいて正当な種であると考えられました。

ピナコサウルスは、当初はノドサウルス科に分類されていましたが、現在ではアンキロサウルス科に分類されています。

古生物学的研究

2023年2月には、ピナコサウルス・グランゲリの喉頭の化石が発見され、曲竜類が発声していた可能性が示唆されました。研究者たちは、その声が鳥の鳴き声に似ていた可能性があると報告しています。今後の研究によって、ピナコサウルスの発声方法やコミュニケーション方法が明らかになるかもしれません。

ピナコサウルスは、その独特な外見と豊富な化石記録から、古生物学者にとって非常に興味深い恐竜です。今後の研究によって、ピナコサウルスの生態や進化について、さらに多くのことが明らかになることが期待されます。

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