ピルグリム航空458便不時着事故

ピルグリム航空458便不時着事故

1982年2月21日、ピルグリム航空458便は、ラガーディア空港発ボストン・ローガン国際空港行きの国内線として運航中、予期せぬ事態に見舞われました。デ・ハビランド・カナダ DHC-6 ツインオッター 100型機は、飛行中に火災が発生し、凍結した貯水池への緊急着陸を余儀なくされました。この事故により機体は大きく損傷し、乗員乗客12名のうち1名が命を落としました。

事故機の詳細

事故機であるデ・ハビランド・カナダ DHC-6 ツインオッター 100（機体番号N127PM）は、1967年に製造され、1972年にピルグリム航空に納入されました。総飛行時間は27,015時間に達し、2基のプラット＆ホイットニーカナダPT6A-27エンジンを搭載していました。特徴的なのは、イソプロパノールを使用する除氷装置が装備されていたことで、これは同型機780機中70機に採用されていました。

乗員の状況

事故当時、機長を務めていたのは36歳のトーマス・プリンスター氏で、総飛行時間は6,500時間、うち2,700時間が同型機での飛行経験でした。事故による火傷で長期間の入院を余儀なくされましたが、見事に回復し、飛行業務に復帰しました。

副操縦士は27歳のライル・ホッグ氏で、総飛行時間は2,100時間、うち400時間が同型機での飛行経験でした。彼もまた、重度の火傷を負いながらも回復し、後に航空業界で重要な役割を担うことになります。

事故の経緯

458便は、グロトン-ニュー・ロンドン空港を離陸後、フロントガラスの着氷に気付き、除氷装置を作動させました。しかし、間もなくコックピット内にアルコールの臭いが充満し、除氷装置を停止。その直後、操縦桿から煙が発生し、火災へと発展しました。

緊急事態を宣言した機長は、T・F・グリーン空港への緊急着陸を試みましたが、煙がコックピットに充満し、視界が極端に悪化。乗客たちは消火を試み、窓を割って煙を排出しようとしましたが、火勢は増すばかりでした。機長は、付近のシチュエート貯水池への不時着を決断しました。

着水時の衝撃で機体は損傷しましたが、乗員乗客の大部分は脱出に成功しました。しかし、火災の熱でドアが開かず、パイロットはコックピットの窓から脱出を余儀なくされました。

事故調査と結論

国家運輸安全委員会（NTSB）の調査により、事故原因は除氷装置の設計上の問題と不適切な整備にあると結論付けられました。具体的には、除氷装置から漏れたイソプロパノールがコックピット下部に蓄積し、何らかの発火源によって引火したと推定されました。

NTSBは、連邦航空局に対し、イソプロパノールを使用する除氷装置の設計見直しや、可燃性液体に関する規制の検証など、6つの勧告を行いました。

事故から得られた教訓

ピルグリム航空458便の事故は、航空機の安全設計と整備の重要性を改めて認識させる出来事となりました。また、緊急時におけるパイロットの冷静な判断と乗客の協力が、人命救助に大きく貢献することを示しました。この事故を教訓として、航空業界全体で安全対策の強化が進められています。

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