ピルバラ

ピルバラ地域

オーストラリア西オーストラリア州を構成する広大な九つの地域の一つです。南はガスコイン、中西部、ゴールドフィールズ・エスペランスの各地域、北東はキンバリー地域に接し、東側はノーザンテリトリーとの州境が境界となります。また、北西側はインド洋に面しています。その面積はおよそ507,896平方キロメートルに及び、人口はおよそ4万人で、その大半がポートヘッドランド、カラーサ、ウィッカム、ニューマン、マーブルバーといった西部の沿岸に近い都市に集中して居住しています。

「ピルバラ」という地名の由来については複数の説があります。一つは、ユール川の支流の一つが、この地域のアボリジニの言葉で魚の「ボラ」を意味する「ピルバラ川」と名付けられたことに始まるとするもの。もう一つは、同じくアボリジニの言葉で「乾燥」を意味する「ビリバラ(bilybara)」から派生したという説が挙げられています。

地理的特徴

ピルバラ地域は地形的に三つの異なるゾーンに分けられます。第一に、海岸沿いの西部は平坦な砂地で、地域人口のほとんどがここに集中し、産業や商業活動の中心地となっています。第二に、東部はほぼ全域が広大な砂漠地帯で、ごく少数の先住民が暮らすのみです。第三に、中央部はハマースレー山脈を中心とした山岳地帯が広がり、複数の鉱山都市が存在するほか、壮大な峡谷群など魅力的な自然景観が見られます。この中央部の地質環境は非常に古く、学術的に価値が高いとされています。例えば、古代の生命活動の痕跡である化石化したストロマトライトや、約30億年前に形成された花崗岩などが確認されています。

気候と生態系

ピルバラ地域の気候は、[砂漠気候]または[ステップ気候]に分類され、全体として高温かつ乾燥しています。特に夏は最高気温が連日32℃を超えるのが常で、45℃を超える日も珍しくありません。マーブルバーでは、1923年10月31日から翌年4月7日まで160日間にわたり連続で最高気温が37.8℃（華氏100度）を超えたという特異な記録が残っています。また、オーストラリア北部の沿岸地域と同様に、この地域は頻繁にサイクロンの影響を受けます。そのため、11月から5月にかけてのサイクロンシーズンには、激しい雨による洪水が発生することがあります。しかし、人口密度が低いことから、大規模な人的または物的被害に至るケースは比較的少ないとされています。

この地域には、地下水系や帯水層に生息する微小な無脊椎動物群を含め、多様な固有種が存在しています。ピルバラオリーブニシキヘビのようなこの地域特有の爬虫類は、不安定な砂漠環境下で絶滅の危機に瀕している動物の一つです。また、特定のアカシアの仲間も広く自生しており、保護の対象となっています。こうした繊細な自然環境を守るため、カリジニ国立公園のような世界的に知られる国立公園が設けられています。

経済活動

ピルバラ地域の経済は、主に鉱業とその産出物の輸送によって支えられています。中でも鉄鉱石採掘が最も重要な産業であり、オーストラリア国内の鉄鉱石生産量の大部分がこの地域、特にトムプライスやニューマン周辺で産出されています。鉄鉱石採掘および関連産業は、地域内でおよそ9000人分の雇用を生み出しています。鉄鉱石の大規模な埋蔵が確認されたのは1951年、ラング・ハンコック氏によるものです。現在も彼の娘であるジーナ・ラインハート氏が広大な採掘権を有しており、家族経営のハンコック・プロスペクティング社は自社の採掘事業に加え、採掘権料によっても収益を上げています。鉄鉱石以外では、ポートヘッドランドの南東約400キロメートルに位置するウディーウディーが世界有数のマンガン産地として知られています。

交通（鉄道）

地域の鉄道網は、1911年にポートヘッドランドとマーブルバー間に敷設されたのが最初ですが、この路線は現存しません。現在では、主に鉄鉱石を輸送するための4つの標準軌（1435mm）路線が稼働しており、新たな路線の建設も計画されています。

地方行政区

ピルバラ地域は、アシュバートン、イーストピルバラ、ポートヘッドランド、ローバーンの各地方自治体によって管轄されています。

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