ピーター・グレッグ

ピーター・ホールデン・グレッグ：伝説のレーシングドライバーの生涯

1940年生まれのピーター・ホールデン・グレッグは、アメリカにおけるモータースポーツ史に燦然と輝く名ドライバーの一人です。トランザムシリーズ黄金期を代表する存在として知られ、IMSA GT選手権では6度のクラス優勝、デイトナ24時間レースでは実に4度の総合優勝という驚異的な記録を打ち立てました。彼は卓越したドライビングテクニックに加え、自動車ディーラーやレーシングチーム「ブルモス・レーシング」のオーナーという顔も持ち合わせていた、まさにモータースポーツ界のマルチタレントでした。

多彩な才能と華麗なるキャリア

グレッグは、ニューヨーク市で機械エンジニアの父を持つ裕福な家庭に生まれました。名門ディアフィールドアカデミーを卒業後、ハーバード大学に進学し、英語の学位を取得。その後は映画製作に携わるなど、モータースポーツとは異なる分野にも挑戦しています。しかし、彼の真の情熱は自動車レースにありました。

ハーバード卒業後、グレッグはヨーロッパに渡り、セントロサッドドライビングスクールでドライビングテクニックを磨きました。その後、アメリカ海軍に入隊し、航空諜報員として勤務。フロリダ州ジャクソンビル海軍航空基地に配属され、1965年に除隊しました。

彼のレーシングキャリアは、1958年のヒルクライム参加から始まりました。その後、ジムカーナやアイスレースを経て、SCCA公認レースでコルベットを駆り勝利を収めるなど、着実に実力をつけていきます。ポルシェ904、906といった名車に乗り込み、1967年にはSCCAサウスイーストディビジョンチャンピオンに輝き、デイトナとセブリングでも優勝を飾ります。

トランザムシリーズでの活躍とIMSA GT選手権制覇

グレッグは1968年、メルセデス・ベンツのディーラーを買収し、SCCAトランザムシリーズに参戦。1969年にはトランザムレースで6勝を挙げ、タイトルを獲得しました。1971年にはバド・ムーアフォード・マスタングをドライブし、チームメイトのジョージ・フォルマーと共にシリーズを席巻。1973年と1974年には、ブルモス・ポルシェでトランザムシリーズを制覇するなど、その活躍は目覚ましいものがありました。

IMSA GT選手権でもその才能を遺憾なく発揮。1971年にはIMSA GTU、1973年にはIMSA GTOでクラス優勝を達成し、「ピーター・パーフェクト」というニックネームで呼ばれるほどでした。1973年のデイトナ24時間レースでは、ハーレイ・ヘイウッドと共にポルシェ911カレラRSRで優勝を飾りました。

一度は引退を発表したものの、再びレース活動を再開。1975年、1976年、1978年とデイトナ24時間レースで総合優勝を達成。特に1976年の勝利は、BMWアメリカでの初勝利として歴史に刻まれています。IMSA GT選手権では、通算6度のクラス優勝を果たしました。

ル・マン24時間レースへの挑戦と悲劇の事故

1980年6月、グレッグはアル・ホルバートと共にル・マン24時間レースに参戦予定でした。しかし、レース直前の練習走行中に交通事故に遭い、負傷。医師からレース出場を禁じられ、代役が起用されました。事故の後遺症である複視に苦しみながらも、デイトナで開催されたポールリビア250マイルレースに出場しましたが、完走は叶いませんでした。

死とその後

グレッグは1980年12月15日、自宅で遺体で発見され、死因は自殺と推測されています。彼の死は、モータースポーツ界に大きな衝撃を与えました。340レース中152勝という輝かしい戦績は、彼がアメリカの偉大なレーサーの一人であったことを証明しています。

グレッグの死後、彼の妻デボラはブルモス・モーターカーズのオーナー兼CEOに就任し、レーシング活動を継続しました。息子のサイモン・グレッグも、トランザムシリーズやアメリカン・ルマン・シリーズで活躍するレーサーとなり、父の後を継いでモータースポーツ界で成功を収めました。

ピーター・ホールデン・グレッグは、数々の伝説と功績を残した、真のモータースポーツレジェンドとして、今もなお語り継がれています。彼の名は、永遠にモータースポーツ史に刻まれるでしょう。

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