ピーター・ゴダード

オーストラリア出身の元オートバイレーサー、ピーター・ゴダード（Peter Goddard、1964年 6月28日 - ）は、多岐にわたる国際舞台で活躍し、特に1991年の全日本ロードレース選手権GP500クラスでの劇的なタイトル獲得で知られています。ニューサウスウェールズ州ウロンゴン出身の彼は、そのキャリアを通じて様々なカテゴリーで成功を収めました。

キャリアの始まり

ゴダードのオートバイキャリアは、わずか5歳でオートバイに乗り始めたことから始まりました。初期はダートトラックレースで経験を積み、その後、1984年にオランパーク・レースウェイでロードレースへの転向を果たしました。

日本での飛躍

彼の才能が日本のレース界で認められたのは、1988年に全日本ロードレース選手権のTT-F1クラスにモリワキのマシンでスポット参戦した時です。そのパフォーマンスは、チーム代表である森脇護氏の目に留まり、これがきっかけでゴダードは活動の拠点を日本へと移すことになります。

日本でのキャリアにおいて、最も輝かしい成果の一つが1991年の全日本ロードレース選手権GP500クラスでのチャンピオン獲得です。ヤマハYZR500を駆り、シーズンをランキング4位で迎えた最終戦で大逆転を演じ、見事タイトルを手にしました。この勝利は、彼の粘り強さと卓越したライディングスキルを示すものでした。

日本でのレース活動と並行して、ゴダードはロードレース世界選手権（WGP）やスーパーバイク世界選手権（WSBK）にもスポット参戦しました。特にWSBKでは、1989年と1990年に母国オーストラリアのフィリップ・アイランド・サーキットで開催されたラウンドでそれぞれ1勝を挙げています（スーパーバイク世界選手権は通常1ラウンド2レース制で行われます）。

1993年には、再び全日本GP500に参戦。この年はスズキのワークスチームであるラッキーストライク・スズキから参戦し、シリーズランキング6位となりました。また、同チームから故郷で開催されたオーストラリアGPにもスポット参戦しました。

世界選手権での挑戦

1992年、ゴダードはロードレース世界選手権の最高峰クラスである500ccクラスに本格参戦しました。ROCヤマハのマシンを駆るプライベーターとしてシーズンを戦い、シリーズランキング15位を獲得しました。この年のイギリスGPでの5位が、彼のWGPにおけるキャリア最高成績となりました。

その他のタイトルとスーパーバイク世界選手権

日本を離れた後も、ゴダードはレース活動を続けました。1994年から1996年にかけては母国オーストラリアに戻り、オーストラリア選手権スーパーバイククラスに参戦。ここで1994年と1995年の2年連続でチャンピオンを獲得し、国内でもその強さを見せつけました。

さらに、1997年にはスズキのワークスチームから世界耐久選手権に参戦。ダグ・ポーレンをペアライダーとして、この過酷な選手権で見事にタイトルを獲得しました。

1998年からはスーパーバイク世界選手権を主戦場としました。スズキ、アプリリア、カワサキといった有力チームを渡り歩き、2001年から2002年には復活を遂げたベネリのマシンでも走行しました。WSBKでの最高ランキングは1998年の9位でした。

日本のファンには馴染み深い鈴鹿8時間耐久ロードレースにも、初来日した1988年以降、幾度となく参戦しています。この名誉あるレースでは、2度の表彰台を獲得するなど、耐久レースにおける高い適応力も示しました。

引退後の活動

レーサーとしてのキャリアを終えた後も、ゴダードはレース界との関わりを保ち続けています。エンジニアとしてレースチームに参加し、特に2010年にはBMWのサテライトチームであるレイトワーゲンBMWチームにシャーシ担当エンジニアとして加わりました。

さらに、彼はレース運営や組織の要職にも就いています。2023年現在では、オーストラリアのモータースポーツ統括団体であるモーターサイクルオーストラリアの会長を務める傍ら、ロードレース世界選手権のアシスタントスチュワードとしても活動しており、彼の豊富な経験を次世代の育成やレース運営に活かしています。ピーター・ゴダードは、レーサーとしてだけでなく、技術者、そして組織のリーダーとしてもオートバイ界に貢献し続けている人物です。

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