ピーター・メニン

ピーター・メニン（Peter Mennin、1923年5月17日 - 1983年6月17日）は、20世紀アメリカを代表する作曲家の一人であり、優れた音楽教育者としてもその名を刻んでいます。イタリアからの移民を親に持ち、ペンシルベニア州エリーで生を受けた彼は、本来メニーニ（Mennini）という姓でした。

彼のキャリアにおいて、教育者としての側面は非常に重要です。ボルティモアにある著名な音楽教育機関であるピーボディ音楽院の院長を務め、その経営と教育に尽力しました。その後、活躍の場をニューヨークへと移し、世界的に名高いジュリアード音楽学校の校長に就任しました。前任者であるウィリアム・シューマンからその重責を引き継ぎ、学校の発展に貢献しました。

作曲家としては、メニンは若くから活発な創作活動を開始しました。その作品リストは非常に豊富で、多作であったことがうかがえます。特に中心となるのは9曲の交響曲ですが、それ以外にも数多くの協奏曲、そして吹奏楽や合唱のための作品を多数作曲しました。彼の音楽は、同時代の他の作曲家たちの作品とは一線を画す特徴を持っていました。

メニンの作曲様式は、当時の音楽界において斬新な響きを持っていました。彼は意欲的に半音階的な書法を導入し、その響きは時に聴き手に難解さ（晦渋さ）を感じさせるものでした。しかし、その表面的な響きの裏側には、揺るぎない調性が基盤として存在しています。そして、彼の様式を特徴づける最も重要な要素は、精緻で巧みな対位法の駆使です。複数の独立した旋律線を同時に進行させる対位法的な手法は、彼の作品に強固な構造と奥行き、そして力強い推進力を与えています。この対位法への深い傾倒は、バッハなどの過去の巨匠たちとの精神的なつながりを感じさせるとともに、彼自身の個性的な声となっています。

メニンの主要な作品群は以下の通りです。

主要作品一覧

交響曲
第1番（撤収）
第2番（1944年作曲） - 1945年にガーシュウィン・メモリアル・アウォードを受賞し、若きメニンの名を広めるきっかけとなりました。
第3番（1946年作曲、1947年初演）
第4番『ザ・サイクル』（The Cycle）（1947年-48年作曲） - 合唱と管弦楽のために書かれた意欲作です。
第5番（1950年作曲）
第6番（1953年作曲）
第7番『交響的変奏曲』（Variation-symphony）（1963年ごろ委嘱、1967年出版） - 彼の後期を代表する重要な作品の一つです。
第8番（1973年作曲）
第9番（1981年作曲）

管弦楽曲
『フォーク・オーヴァーチュア』（Folk Overture）(1945年)
弦楽オーケストラのための幻想曲 (1947年)
コンチェルタート『モビー・ディック』（Moby Dick） (1952年) - メルヴィルの小説にインスパイアされた作品です。
チェロ協奏曲 (1956年)
ピアノ協奏曲 (1958年) - 高名な指揮者ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団によって初演されました。
歌『カント』（Canto） (1965年出版)
フルート協奏曲 (1983年) - 彼の最晩年の作品の一つです。

合唱曲
『屋敷の歌』（A Song of the Palace） (1948年)
『クリスマス物語』（Christmas Story） (1949年)

室内楽
弦楽四重奏曲 第1番
弦楽四重奏曲 第2番 (1951年)
ヴァイオリンとピアノのための協奏風ソナタ (1956年)
ピアノ・ソナタ (1963年)

吹奏楽
* カンツォーナ (1951年)

ピーター・メニンは、教育者として数多くの後進を育てつつ、作曲家としては独自の様式を追求し、多岐にわたるジャンルで重要な作品を残しました。彼の音楽は、20世紀アメリカのクラシック音楽における一つの確固たる存在感を示しています。彼は1983年6月17日、ニューヨーク市で60年の生涯を終えました。

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