天体望遠鏡における
ファインダーとは、目標とする
天体を主鏡筒の
視野に導入するための補助的な小型
望遠鏡です。しばしば「案内
望遠鏡」とも呼ばれます。主鏡筒と
平行に取り付けられ、低倍率かつ広
視野で
天体を捉えることができます。
ファインダーの
視野内には通常、十字線が刻まれており、その交点に目標
天体を合わせることで、狭い
視野の主鏡筒でも容易に目標を捉えることができるようになります。
ファインダーの概念を最初に考案したのは、17世紀の天文学者
クリスティアーン・ホイヘンスであるとされています。実際に
ファインダーを備えた
望遠鏡としては、1722年にジョン・ハドリーが製作した
放物面鏡を用いた
ニュートン式望遠鏡が確認されています。
ファインダーは、その役割を果たすために主鏡筒の光軸と常に
平行である必要があります。そのため、使用前には
ファインダーと主鏡筒が同じ対象を捉えるように調整する作業(
ファインダー合わせ)が不可欠です。
ファインダーには調整用のネジが備わっています。
ファインダーの
接眼レンズには十字線(レチクル)が刻まれており、
ファインダーと主鏡筒が正確に
平行であれば、十字線の交点に合わせた
天体は主鏡筒の
視野中心に現れます。一般的な
ファインダーは小型の
ケプラー式望遠鏡で、像は倒立して見えますが、
天体観測においては特に問題ありません。しかし、より使いやすくするために、
プリズムを挿入して正立像を実現した
ファインダーも存在します。また、暗い環境でも十字線が見やすいように、暗
視野照明機能を備えたものもあります。
接眼レンズの光学系には、ケルナー式がよく採用されています。
望遠鏡型の
ファインダーには、
双眼鏡と同様に仕様を示す数値が表記されています。例えば、「6×30」とあれば、倍率が6倍、対物レンズの口径が30
ミリメートルであることを意味します。一般的な
ファインダーは、口径が2〜5
センチメートル、倍率が5〜10倍程度です。
星雲や
星団などの淡い
天体を捉えるためには、口径が大きい方が有利ですが、
望遠鏡本体とのバランスも考慮する必要があります。
ファインダーは、鏡筒を保持する取付部と、主鏡筒に固定する
ファインダー脚から構成されます。
ファインダー脚は主鏡筒または接眼部に固定され、
ファインダーをしっかりと保持します。取付部には、
ファインダーの向きを調整するための修正ネジがあり、通常3本または6本のネジで調整します。
3本ネジの場合、取付部自体が支点となり、6本ネジの場合は、前後の3本ずつで支点と調整を行います。調整が終わったら、
ロックナットでネジを固定し、
ファインダーが動かないようにします。
一般的な
望遠鏡型
ファインダー以外にも、様々な形式の
ファインダーが存在します。
等倍ファインダー: 倍率が1倍で、肉眼と同程度の明るさの天体しか見えませんが、視野が広く、正立像で見えるため、望遠鏡の向きが把握しやすいという利点があります。
のぞき穴式ファインダー: 最もシンプルな
ファインダーで、
望遠鏡の前後にある穴を通して対象を見ることで、
視野内に導入します。
ドットサイトファインダー: ガラスを通して覗き、LEDやレーザーで照準用の光点や十字線を浮かび上がらせる仕組みです。
ファインダーは、天体望遠鏡にとって非常に重要なアクセサリーであり、かつては必須の付属品でした。しかし、近年、自動導入装置が普及してきたため、ファインダーは必ずしも必須ではなくなりつつあります。
まとめ
ファインダーは、天体観測において目標の天体をスムーズに導入するための重要なツールです。様々な種類や性能がありますが、自分の観測スタイルに合ったファインダーを選ぶことが重要です。天体観測をより快適にするために、ファインダーの知識を深めておきましょう。
出典
えびな, みつる『上手な買いかた・使いかた よくわかる
天体望遠鏡ガイド』
誠文堂新光社, 2009年6月30日。
ISBN 978-4-416-20925-7。
太田, 健太郎『天体望遠鏡入門』(5版)地人書館, 1986年9月30日。ISBN 4-8052-0076-6。
西条, 善弘、渡辺, 和明『新版・
天体望遠鏡ガイドブック』
誠文堂新光社, 1989年8月18日。
ISBN 4-416-28909-X。
平林, 茂人『天体望遠鏡クラブ』誠文堂新光社, 1996年7月15日。ISBN 4-416-29611-8。
丸山, 秀明『初心者のための
天体望遠鏡の使い方と作り方』土屋書店, 1980年。
ISBN 4-8069-0185-7。
関連文献
吉田, 正太郎『よくわかる天体望遠鏡』地人書館, 1981年7月15日。ISBN 4-8052-0148-7。
関連項目
ファインダー
外部リンク
“ファインダー(ふぁいんだー)”. つるちゃんのプラネタリウム. 2021年4月22日閲覧。
“ファインダーとその調整”. 友柚工房 (2006年6月16日). 2021年4月22日閲覧。
*
“スカイウォッチングに必要なもの・用具編”. 一般社団法人 日本望遠鏡工業会. 2021年4月22日閲覧。