ファミスタ64

1997年11月28日、ナムコからNINTENDO64（N64）向けにリリースされた野球シミュレーションゲーム、それが『ファミスタ64』です。本作は、数多くの野球ゲームを手がけてきたナムコが日本国内でN64向けに発売した唯一のソフトウェアとして、シリーズの歴史においても特筆すべき存在です。

『ファミリースタジアム』シリーズは、初代が発売された1986年から本作に至るまで、12年連続で任天堂の家庭用据え置き機で新作が登場し続けていました。しかし、『ファミスタ64』の発売後、次の据え置き機タイトルであるニンテンドーゲームキューブ|ニンテンドー_ゲームキューブ版『ファミリースタジアム2003』まで、およそ6年間のブランクが生じることになります。携帯ゲーム機では、それより早い2002年にゲームボーイアドバンスで新作が出ていますが、据え置き機シリーズにおける本作の立ち位置は、一つの時代の区切りとなったと言えるでしょう。

ゲームの特徴

本作では、日本野球機構（NPB）公認データに基づき、実在のプロ野球12球団および所属選手が実名で登場します。一方で、シリーズお馴染みの架空球団であるナムコスターズやアメリカンズも健在。球場は架空のものが12種類用意されています。

ハードがNINTENDO64になったことで、グラフィックは大きく進化しました。投打画面の選手はポリゴンで表現され、打撃や投球のアクションにはモーションキャプチャ技術が用いられています。これにより、選手の動きがよりリアルに描写されています。

試合中の演出も充実しています。前作のスーパーファミスタシリーズから引き継がれた「野次」システムでは、球場ごとに異なる6種類の方言野次が飛び交います。特に、関東圏の球場では標準語に加え、当時の流行語であるコギャル語の野次を聞くことができる球場も存在します。

また、打順を決めるオーダー画面では、各選手に短いコメントが表示されるのもユニークな点です。試合終了後には、架空のスポーツ新聞「ナムコスポーツ」が表示されますが、本作ではこれがウェブページ形式になっており、特定の場所をクリックすると試合結果とは関係ない「隠しページ」を閲覧できるという遊び心も盛り込まれていました。

セーブ方式に関しては、データの保存に別売りのコントローラーパックが必須でした。ゲームデータだけでコントローラーパックのほぼ全容量（123ページ）を使用するため、プレイするには別途コントローラーパックを用意するか、既存データを全て削除する必要がありました。

多彩なゲームモード

『ファミスタ64』には、全部で10種類のモードが搭載されています。通常の対戦はもちろん、ユニークな遊び方ができるモードも豊富です。

1戦勝負: 好きな球団（実在12＋架空2＋オリジナル）と球場を選んで手軽に対戦を楽しめるモードです。
リーグ戦: 参加チーム数や試合数を設定して総当たりのリーグ戦を行います。最大6人まで参加可能で、コンピューターとの対戦観戦はできません。
ペナント: 実際のプロ野球に近い形式で、135試合または短縮日程のペナントレースを戦い抜き、日本一を目指します。試合中に選手のケガや、選手のやる気に影響する選択肢イベントが発生するなど、長期戦ならではの要素があります。イベントの成功/失敗が選手の調子に大きく影響するため、ペナントを勝ち抜く鍵となります。
オールスター: セントラル・パシフィック両リーグのスター選手を集めた一試合を楽しめます。特徴的なのは選手の選出方法で、用意されたキーワードを3つ選ぶことで、自動的に出場選手が決定されます。
君の最強チーム: 本作最大の目玉となるRPG風モードです。地球を襲撃した「メタル星人」を倒すため、全国を巡りながらプロ野球選手をスカウトし、自分だけの最強チームを作り上げます。スカウトはミニゲーム形式で行われ、選手は成長・衰退といった概念があり、巡回中のイベントで能力がアップすることもあります。メタル星人を倒しても毎年パワーアップして再び襲来するため、半永久的にチームを強化し続けることが可能です。
協力プレー: 3人または4人で対戦できる特殊モードです。最大4人対COMや、変則的な人数での対戦も可能です。各プレイヤーの担当選手を細かく設定でき、連携プレーが重要になります。試合後のナムコスポーツには、プレイヤーごとの成績が評価とともに表示され、誰が活躍したかが一目でわかります。
ミニゲーム: 『君の最強チーム』に登場するミニゲームの一部（くじ引きを除く7種類）を単独でプレイできます。雪合戦など、最大4人まで対戦できるものもあります。
助っ人を作ろう: オリジナル選手を作成できるエディットモードです。最大9人まで作成でき、能力値を自由に設定できるため、極端に強力な選手を作ることも可能です。ただし、所属できるのは実在の12球団のみです。

その他の要素

登場する12球場には、神宮球場や横浜スタジアム、東京ドーム、甲子園球場などをモデルにした架空の名称の球場が含まれます。中には、2球団が本拠地として共用している設定の球場もあります。

その他、オープニングムービーが全12球場分用意されていたり、試合中のBGMが後の『SUPERワールドスタジアム』シリーズに流用されたり、開発スタッフの名前がBGMタイトルや『君の最強チーム』の初期メンバー名に使われたりしているなど、様々な小ネタや作り込みが見られます。CMには元プロ野球選手が出演したり、開発ディレクターがラジオCMで本作への思いを語ったりするなど、プロモーションにも力が入れられていました。

『ファミスタ64』は、ハード性能の向上によるグラフィックの進化、そして「君の最強チーム」に代表されるユニークなモードによって、従来のシリーズファンだけでなく、N64ユーザーにも新しい野球ゲーム体験を提供した意欲作であり、任天堂ハードにおけるファミスタシリーズの一つの到達点、そして長期休止前の節目となったタイトルと言えます。

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