ファルツ航空機製造会社

ファルツ航空機製造会社：第一次世界大戦期のドイツ航空機メーカー

ファルツ航空機製造会社（Pfalz Flugzeugwerke）は、第一次世界大戦中に存在したドイツの航空機メーカーです。ラインラント地方のスペイエル飛行場を拠点に、数々の戦闘機を開発・製造しました。特に、ファルツ D.IIIやファルツ D.XIIなどの機体は、当時の航空戦力の一翼を担い、その名を知られています。

しかし、第一次世界大戦の終結後、同社はフランスの占領下に置かれ、すべての設備が押収されるという事態に見舞われました。これにより、ファルツ航空機製造会社は倒産を余儀なくされます。その後、同社の工場は、様々な航空機メーカーによって利用されました。

そして1997年、同社は部品メーカー「PFW」として再建を果たし、再び航空業界に足跡を残し始めました。

歴史

ファルツ航空機製造会社の歴史は、1912年から1913年頃に、工場所有者の息子であるアルフレート・エーベルブーシュAlfred Eversbuschが、自らの飛行機を製造するために設立したのが始まりです。1913年6月13日には、家族や出資者らの協力のもと、正式に会社が設立されました。

設立当初は、いくつかの事業が計画されましたが、1914年2月6日、スペイエル飛行場に工場用地を取得。第一次世界大戦が始まるわずか1ヶ月前に、工場が完成しました。当初は、モラーヌ・ソルニエ単葉機のライセンス生産を行っていましたが、後にローラント D.I およびローラント D.IIの製造へと移行しました。しかし、ローラント D.IIは1916年末までに旧式化してしまいます。

その後、ファルツは独自の設計による戦闘機、ファルツ D.IIIを開発しました。1917年8月から運用が開始されましたが、アルバトロス D.V.などの機体と比較すると性能面で見劣りする点があり、降下速度を活かした観測気球攻撃任務などに用いられました。それでも、D.IIIとその改良型であるD.IIIaは、約1年間で600機ほどが生産されました。

D.IIIにジーメンス・ハルスケのSh.IIIロータリーエンジンを搭載した機体が、ファルツ D.VIIIです。この機体は、優れた上昇力を誇りましたが、エンジンの信頼性に問題があり、少数の生産に終わりました。また、三葉機であるファルツ Dr.Iは、1918年1月に行われた戦闘機の競争試作に参加しましたが、フォッカー Dr.Iに敗れ、10数機の生産に留まりました。

D.IIIを改良し、一葉半の構造をフランスのSPADのような複葉機にしたのが、ファルツ D.XIIです。この機体は、1918年6月の戦闘機競争試作に参加し、フォッカーの単葉機E.Vなどと競合しました。外観や性能はフォッカー D.VIIに匹敵しましたが、操縦性に難があり、着陸が難しいという欠点がありました。それでも、停戦までに800機が生産され、その多くは戦後、連合軍に戦利品として接収され、映画『地獄の天使』などで使用されました。

第一次世界大戦終結後、ファルツの工場はフランスの占領下に置かれ、設備は没収されました。1919年には、A.G. Pfalzとして工業製品の製造・販売会社として再建されましたが、1932年の世界恐慌の影響を受け、倒産しました。その後、1937年10月1日、Saarpfalz Flugwerkeとして航空機の修理事業を行う会社として再建されました。スペイエル飛行場は一時閉鎖されていましたが、1938年に再開されました。

1937年末に約200人の従業員でスタートした同社は、第二次世界大戦の開戦により従業員を500人に増やし、終戦時には1,500人にまで拡大しました。この間、フォッケウルフ Fw 58、ハインケル He 45、ハインケル He 46、He 51、He111、ユンカース Ju 52、Ju 88などの機体を生産しました。しかし、アメリカ軍とフランス軍の進駐により、生産活動は終了しました。

戦後、エルンスト・ハインケルがスペイエルの工場を買収し、バブルカーであるハインケル カビーネの生産に利用しました。1964年に航空会社VFWが設立されると、スペイエル工場はC-160 トランザールの生産に用いられ、UH-1やCH-53 Sea Stallionの部品製造も行われました。また、他の航空機メーカーの部品生産も請け負いました。1983年には、メッサーシュミット・ベルコウ・ブロームに買収され、ヘリコプターの修理工場となりましたが、1989年にMBBはダイムラークライスラー・エアロスペースに吸収されました。そして、1997年1月1日、再びPfalz Flugzeugwerkeとしてヘリコプターの修理業務を開始し、現在に至ります。

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