ファンゴッホの寝室

ファン・ゴッホの寝室

フィンセント・ファン・ゴッホの『ファン・ゴッホの寝室』は、1888年から1889年にかけて制作された油絵作品です。この作品は、ゴッホがフランスのアルルで生活していた家の2階の寝室を描いたもので、同じ構図で3つのバージョンが存在することで知られています。

作品について

ゴッホはアルルでの生活の中で、自身の身の回りの物を題材に多くの作品を描きました。『ファン・ゴッホの寝室』もその一つで、彼の生活空間への関心と、独自の色彩感覚が表現されています。部屋の内部は、ベッド、椅子、テーブルなどの家具が配置され、壁には絵画が飾られています。これらの要素は、ゴッホが実際に使用していたものであり、彼の日常を垣間見ることができます。ゴッホは、この部屋で寝起きし、多くの時間を過ごしました。

現存しないものの、この家はゴッホの作品『黄色い家』に描かれており、その外観を知ることができます。また、絵の左側の扉は、かつてポール・ゴーギャンが使用していた部屋につながっていたとされています。ゴッホとゴーギャンは、この家で共同生活を送っていましたが、後に二人の関係は破綻しました。

3つのバージョン

『ファン・ゴッホの寝室』には、3つのバージョンが存在します。

1. 最初のバージョン：1888年10月に制作され、ゴーギャンがアルルに来る直前に描かれました。この作品は、アムステルダムのゴッホ美術館に所蔵されています。
2. 2番目のバージョン：1889年9月に最初のものをほぼ同サイズで複製したものです。この作品は、アメリカのシカゴ美術館に所蔵されています。
3. 3番目のバージョン：1889年9月にゴッホの母のためにサイズを縮小して複製したものです。この作品は、日本の実業家である松方幸次郎が購入しましたが、第二次世界大戦後にフランスの国有となり、現在はパリのオルセー美術館に所蔵されています。

松方コレクションと矢代幸雄

3番目のバージョンは、かつて松方幸次郎のコレクションの一部でした。松方は、1921年頃にパリで美術評論家の矢代幸雄と共に絵画を購入していました。この際、『ファン・ゴッホの寝室』は、ルノアールの『アルジェリア風のパリの女たち』と共に画商から売りに出されており、矢代は「希代の傑作」として松方に購入を勧めました。しかし、松方は一度はこれを断り、矢代は落胆したとされています。その後、矢代が知らない間に松方はこの作品を購入したといいます。

文化的な影響

『ファン・ゴッホの寝室』は、美術史における重要な作品として、多くの人々に知られています。また、この作品は、様々なメディアにも影響を与えています。例えば、2010年に放送されたイギリスのSFドラマ『ドクター・フー』第5シリーズ「ゴッホとドクター」では、この絵を再現したゴッホの寝室が登場しました。このシーンは、クロアチアのトロギルで撮影されました。

まとめ

『ファン・ゴッホの寝室』は、ゴッホの生活空間への興味と、独特な色彩感覚が表現された作品です。3つのバージョンが存在し、それぞれ異なる場所で鑑賞することができます。また、この作品は、美術史だけでなく、文学や映像作品にも影響を与えており、その文化的意義は非常に大きいと言えるでしょう。

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