ファントマ ミサイル作戦

『ファントマ ミサイル作戦』

『ファントマ ミサイル作戦』（原題：Fantômas contre Scotland Yard）は、1967年にフランスで公開されたコメディ映画です。これは、フランスで広く親しまれている犯罪小説シリーズ『ファントマ』を原作とする映画化作品であり、1964年の『ファントマ/電光石火』、1965年の『ファントマ危機脱出』に続く三部作の最終作にあたります。

監督は、前二作から引き続きアンドレ・ユヌベルが手掛けました。主要キャストには、ファントマと新聞記者ファンドール卿の二役を演じるジャン・マレー、その恋人エレーヌ役のミレーヌ・ドモンジョ、そしてファントマを追う騒々しいファンダー警部を演じるルイ・ド・フュネスが名を連ねています。

本作は、本国フランスでも人気を博しましたが、特にソビエト連邦では驚異的な大ヒットを記録しました。その観客動員数は、フランス国内の実に10倍以上にも達したと言われています。このソ連での成功を受け、製作陣は新たな続編の企画を立ち上げました。それが、モスクワを舞台とする第4作「モスクワのファントマ」です。

しかし、残念ながらこの続編が日の目を見ることはありませんでした。その大きな理由として挙げられるのが、主演を務めるジャン・マレーとルイ・ド・フュネスという二人の名優間に生じた確執です。前作までの共演を通して、ルイ・ド・フュネスの個性的で強烈なコメディ演技が次第に存在感を増し、本来の主役であるジャン・マレーの演じるファントマ/ファンドール卿の印象を薄めてしまうという状況が生まれました。ルイ・ド・フュネスは、その人気と実力から物語の中心人物として描かれることが増え、結果的にジャン・マレーは実質的に脇役のような扱いになってしまったと感じていたようです。この力関係の変化や演技におけるバランスの崩れが、両者の間で溝を生み、互いに今後の共演を拒否する事態に発展しました。主役級の二人の俳優の協力が得られなくなったため、「モスクワのファントマ」の製作は中止せざるを得なくなったのです。

スタッフとしては、原作はマルセル・アランとエミール・スーベストルによる小説、脚本はジャン・アランとピエール・フーコーが担当しました。撮影はマルセル・グリニヨン、音楽はミシェル・マーニュが手掛けています。

日本では、初公開から長い時を経て、2006年にリバイバル上映が行われ、再び日本のファンがスクリーンで本作を鑑賞する機会が設けられました。

『ファントマ ミサイル作戦』は、三部作の締めくくりとして、ユーモアとアクションを交えながら、犯罪王ファントマと彼を追う人々とのスリリングな駆け引きを描いています。そして、主演俳優間のドラマによって幻となった続編企画のエピソードは、このシリーズが持つ独特の魅力と背景を物語る興味深い側面と言えるでしょう。

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