ファントム・ブルース

ファントム・ブルース (Phantom Blues)

『ファントム・ブルース』は、アメリカを代表するブルース・ミュージシャン、タジ・マハールが1996年に発表したスタジオ・アルバムです。この作品は、その音楽性だけでなく、多数の著名なゲスト・ミュージシャンが参加したことでも注目を集めました。

背景

本作の制作には、音楽界の様々な分野から実力派のミュージシャンが集結しました。特に目を引くのは、長年にわたり交流のあるアーティストたちの参加です。

収録曲「アイ・ニード・ユア・ラヴィング」では、著名なシンガーソングライターであるボニー・レイットがゲスト・ボーカルを務めています。タジ・マハールとボニー・レイットは以前から親交があり、マハールは1973年にリリースされたレイットのアルバム『テイキン・マイ・タイム』にもハーモニカやベース、バッキング・ボーカルとして参加した経験があります。

また、世界的なロック・ギタリストであるエリック・クラプトンも2曲でゲスト参加しています。マハールとクラプトンの出会いは古く、1968年にローリング・ストーンズが企画した伝説的なテレビ・ショウ『ロックンロール・サーカス』での共演に遡ります。

さらに、アメリカン・ロック界の重鎮であるトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのギタリスト、マイク・キャンベル、そしてラテン・ロック・バンド、ロス・ロボスのデイヴィッド・イダルゴといった面々もレコーディングに参加しており、本作に豊かな音楽的色彩を加えています。

反響と評価

『ファントム・ブルース』は、商業的な成功と批評的な評価において、いくつかの特徴を示しました。

アメリカ国内では、主要な総合アルバム・チャートであるBillboard 200へのランクインは果たせませんでしたが、『ビルボード』誌のブルース・アルバム・チャートでは最高位3位を記録し、ブルース分野における存在感を示しました。

また、本作は第39回グラミー賞において、「最優秀コンテンポラリー・ブルース・アルバム賞」にノミネートされるという栄誉に輝き、その音楽性が高く評価されたことを証明しました。

音楽評論家のウィリアム・ルールマンは、オールミュージックのレビューで5点満点中2.5点を与え、本作について「単なるルーツ音楽の探求に留まらず、異なる音楽要素を融合させた先進的なプログレッシヴ・ブルースとして結実している」と評しました。これは、伝統的なブルースの枠に収まらない本作のアプローチに注目した評価と言えるでしょう。

一方、『CDジャーナル』のミニ・レビューでは、「タジ・マハール最大の個性の一つであるカリブ海音楽への志向が薄れている点は少し残念ではあるが、円熟期を迎えた彼の枯れた味わいのヴォーカルはやはり魅力的で捨てがたい」といった趣旨の評価が述べられており、その音楽性に対する多様な視点が存在することがうかがえます。

収録曲

本作には、以下の14曲が収録されています。

1. ラヴィン・イン・マイ・ベイビーズ・アイズ
2. チーティン・オン・ユー
3. ザ・ハッスル・イズ・オン
4. ヒア・イン・ザ・ダーク
5. ファンニング・ザ・フレイムス
6. アイ・ニード・ユア・ラヴィング
7. ウー・プー・パー・ドゥー
8. ロンリー・アヴェニュー
9. ドント・テル・ミー
10. ホワット・アム・アイ・リヴィング・フォー?
11. ウィアー・ゴナ・メイク・イット
12. レット・ザ・フォー・ウィンズ・ブロー
13. （ユーヴ・ガット・トゥ）ラヴ・ハー・ウィズ・ア・フィーリング
14. ザ・カー・オブ・ユア・ドリームス

（各曲の作曲者や演奏時間は、オリジナルのクレジットに基づいています）

主な参加ミュージシャン

本作のサウンドを彩った主な参加ミュージシャンは以下の通りです。

タジ・マハール: ボーカル、ドブロ・ギター、ハーモニカ
ボニー・レイット: ボーカル (on #6)
エリック・クラプトン: リードギター (on #4, #13)
マイク・キャンベル: 12弦ギター (on #1)
デイヴィッド・イダルゴ: アコーディオン (on #12)
ジョン・ポーター: リードギター、アコースティック・ギター、スライドギター
ディーン・パークス: リードギター
ジョニー・リー・シェル: ギター、バッキング・ボーカル
ジョン・クリアリー: ギター、ピアノ、エレクトリックピアノ、クラビネット、バッキング・ボーカル
ミック・ウィーヴァー: ハモンドオルガン
ラリー・ファルチャー: ベース、バッキング・ボーカル
トニー・ブラウナゲル: ドラムス、パーカッション、タンバリン

その他、管楽器奏者や多数のバッキング・ボーカリストが参加し、この作品の多彩なサウンドを作り上げています。

『ファントム・ブルース』は、タジ・マハールが自身の音楽性を拡張しつつ、豪華な共演者たちと共に作り上げた、1990年代における重要なブルース・アルバムの一つと言えるでしょう。

もう一度検索