ファーターラント (砲艦)

ファーターラントの歴史

ファーターラント（ドイツ語: SMS Vaterland）は、1903年に進水したドイツ帝国海軍の河用砲艦です。この艦船は、主に中国での居留民保護を目的に設計されました。19世紀末から各国が長江流域に自国民保護のために河用砲艦を配備する中、ドイツもその流れに加わり、まずツィンタウ級砲艦を2隻建造しました。ファーターラントはその2番艦として、シーシャウ社の造船所で進水しました。

完成後、ファーターラントはドイツ東洋艦隊に属し、長江流域の警備任務に従事しました。しかし、1914年に第一次世界大戦が勃発すると状況は一変します。当初中立国であった中華民国は、多くの国の河用砲艦を武装解除しましたが、1917年にはドイツに対して開戦しました。これにより、ファーターラントは中華民国軍に鹵獲され、同年に「利綏」と改名されました。

新たに「利綏」となったこの艦は中華民国海軍に編入され、国境警備の強化のためにアムール川に回航されました。特に、ロシア内戦に対抗するための動きの中で、「利綏」はウラジオストク経由で派遣され、日本の「江亨」やドイツから改名された「オッター」と共に運用されるようになりました。しかしながら、河川での行動は容易ではなく、様々な困難に直面しました。

1920年10月にはハルビンに進出しましたが、後には奉天派の指導下で活動しました。さらに、1929年の中ソ紛争では、利綏は三江口での戦闘に参加し、ソ連艦隊との交戦を経て被弾しながらも撤退しました。この戦闘において、中国の艦艇としては唯一生き残った艦でもありました。

その後、1931年に発生した満州事変では、利綏は日本軍に鹵獲され、満洲国軍の江防艦隊に編入されました。この時期においても、利綏はソ連との国境を守る任務を続けていました。1945年8月にはソ連が対日参戦し、満洲国軍の江上軍は消滅しました。利綏のその後の運命は不明確であり、ソ連に鹵獲されたとの噂はあるものの、詳細な記録は残っていません。

このように、ファーターラント—後に利綏と改名—の歴史は、当時の国際情勢や戦争の影響を色濃く映し出しています。その運命は、翻弄される国際関係の中で次々と変わり行くものでありました。

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