フィアット・127

フィアット127：ヨーロッパを席巻したスーパーミニの傑作

フィアット127は、イタリアの自動車メーカー、フィアットが1971年から1983年まで製造したスーパーミニカーです。フィアット850の後継車として登場し、コンパクトなボディながら広い室内空間と優れた走行性能で、瞬く間にヨーロッパ市場を席巻しました。

誕生と革新的な設計

1971年4月、2ドアセダンとしてデビューしたフィアット127。翌年には、ハッチバックドアと折り畳み式後部座席を備えた3ドアハッチバックを追加し、実用性をさらに高めました。このモデルは、フィアット初のスーパーミニであり、アウトビアンキ・プリムラやA112で検証された横置きエンジンとトランスミッションの組み合わせを採用した点も画期的でした。903ccのOHVエンジンと、後輪に横置き板バネサスペンションを採用し、高い操縦性と床面積の80%を有効活用できる広い室内空間を実現。全ポリプロピレン製バンパーに鋼製補強板を採用するなど、安全性にも配慮した設計が評価されました。

ヨーロッパカーオブザイヤー受賞と商業的成功

高い評価は商業的な成功へと繋がりました。1972年にはヨーロッパカーオブザイヤーに選出され、数年間ヨーロッパでベストセラーカーの1つとなりました。これは、フィアットにとって過去6年間で3台目の受賞という快挙でした。1974年には、トリノのミラフィオーリ工場で100万台目の生産を達成。フィアット600が同じ生産台数に到達するのに7年かかったことを考えると、その人気ぶりは明らかです。

シリーズとバリエーション

フィアット127は、生産期間中にいくつかのシリーズチェンジを行いました。

シリーズ1: 1973年にはサルーンモデルにスタンダードとデラックスが追加され、1975年にはフロントグリルデザインや内装が変更されたSpecialが発売されました。
シリーズ2: 1977年に登場。フロントとリアのデザイン変更、新しいダッシュボード、拡大された後部側面窓が特徴です。1,049ccエンジンもオプション設定されましたが、これはフィアットブラジル製エンジンでした。また、シリーズ2をベースとしたパネルバンタイプのフィオリーノも登場しました。
* シリーズ3: 1982年に発売された最終シリーズ。樹脂製フロントグリル、リアパネルのデザイン変更、新しいダッシュボードが特徴です。1,301ccのフィアット製SOHCエンジンがオプション設定されました。

グローバル展開とライセンス生産

フィアット127はイタリアだけでなく、世界各国で生産・販売されました。スペインのセアトでは「セアト127」として、4ドア、5ドアモデルが生産され、一部はFIATバッジで輸出されました。ポーランドでは「ポルスキ・フィアット127p」として生産されましたが、価格の高騰により大量生産には至りませんでした。ブラジルでは「フィアット147」として生産され、3ドアステーションワゴンのパノラマや、1.3Lディーゼルエンジン搭載モデルも存在しました。

そしてレガシーへ

フィアット127は、1983年にフィアットウーノに生産を譲りましたが、南アメリカでは1995年まで生産が継続されました。その優れたデザイン、走行性能、そして実用性は、現在でも多くのファンを魅了し続けています。数多くのバリエーション、グローバルな展開、そして数々の伝説を残したフィアット127は、自動車史に輝く一台と言えるでしょう。

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