フィアット・131

フィアット131：WRCの栄光と進化を遂げた小型乗用車

フィアット131は、イタリアの自動車メーカー、フィアットが1974年から1984年にかけて生産した小型乗用車です。1966年にヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した名車、フィアット124の系譜を受け継ぎ、1974年のトリノショーで発表されました。トリノ近郊の生産工場名に因んで、多くのモデルには「ミラフィオーリ」というサブネームが付けられました。

オーソドックスな設計とWRCでの活躍

131は、4ドアセダン、5ドアワゴン（ファミリアーレ）、そして124にはなかった2ドアセダンというボディバリエーションを展開しました。一方で、124で人気を博したクーペとスパイダーは設定されませんでした。デザインはフィアット社内のデザインセンターで手がけられ、オーソドックスな3ボックススタイルのモノコック構造、FRレイアウト、固定式リアアクスルといった、当時の一般的な設計を採用していました。124が採用していた4輪ディスクブレーキは、131では後輪がドラムブレーキに変更されています。

一見すると特徴の少ない設計に見えますが、131は「アバルト・ラリー」というスポーツモデルを生み出し、世界ラリー選手権（WRC）で輝かしい成績を残しました。マルク・アレン、ティモ・サロネン、ワルター・ロールといった名ドライバーたちが、131 アバルト・ラリーを駆り、1977年、1978年、1980年のワールドチャンピオンに輝きました。WRCでの活躍は、131の知名度を飛躍的に高め、フィアットのブランドイメージ向上に大きく貢献しました。

モデルの変遷：シリーズ1、2、3

131は生産期間中に何度かのマイナーチェンジを受け、シリーズ1（1974年-1978年）、シリーズ2（1978年-1980年）、シリーズ3（1980年-1984年）と進化を遂げました。

シリーズ1

初期モデルでは、124と同じOHV4気筒エンジンを搭載。1,297ccと1,585ccの2種類が用意され、1,585ccモデルは「131S」として丸型4灯ヘッドライトを採用していました。アメリカ輸出仕様はDOHCエンジンを搭載し、「フィアット・ブラーヴァ」として販売されました。日本へは、ロイヤルモータース、その後継の東邦モーターズを通じて131Sが輸入されました。

一方、アバルトが開発した「131 アバルト・ラリー」は、軽量化された車体に高性能エンジンを搭載。WRC参戦のためのホモロゲーションモデルとして400台が生産され、その後1000台以上が生産されました。

シリーズ2

1978年のマイナーチェンジで、ヘッドライトが大型の角型2灯式に変更され、テールライトも大型化。内装も刷新され、高級感が増しました。5ドアワゴンは「パノラマ」と改名されました。また、DOHCエンジン搭載車が「スーパーミラフィオーリ」「レーシング」として復活し、ディーゼルエンジン車も追加されました。日本市場には、主にスーパーミラフィオーリが輸入され、3速オートマチックやパワーステアリングが装備されたモデルも多く見られました。

シリーズ3

1980年のマイナーチェンジでは、フィアットの新しいエンブレムが採用され、一部モデルには車体下部にラバープロテクターが追加されました。下位モデルはSOHCエンジンに変更。1981年には、アバルトが開発したスーパーチャージャー搭載の「131ヴォルメトリーコ・アバルト」が登場しました。このモデルは、ランチア・ベータにも搭載されました。しかし、日本市場では、フィアットの輸入代理店がチェッカーモータース・ジャクスに変更されたこともあり、131の正規輸入は終了しました。

海外生産

フィアット131は、スペインのセアト、トルコのトファシュ、エジプトのEl Nasr、エチオピアのHolland Carなど、多くの国でライセンス生産されました。それぞれの国で、デザインや名称が変更されながら、長年にわたって生産が続けられました。

まとめ

フィアット131は、オーソドックスな設計でありながら、WRCでの活躍や多様なバリエーション、そして世界各国での生産を通じて、フィアットの歴史に重要な足跡を残したモデルと言えるでしょう。そのデザイン、性能、そしてWRCでの成功は、今もなお多くの自動車ファンを魅了し続けています。

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