マルク・アレン

マルク・アラン・アレン：ラリー界の無冠の帝王

マルク・アラン・アレン（1951年2月15日生まれ）は、フィンランド出身の伝説的なラリードライバーです。WRC（世界ラリー選手権）黎明期から1990年代初頭まで活躍し、その卓越したドライビングテクニックと類まれな精神力で、世界中のラリーファンを魅了しました。

長身とオールラウンダーとしての才能

190cmを超える長身から繰り出されるアレンのドライビングは、まさに圧巻でした。あらゆる路面コンディション、イベントに対応できるオールラウンダーとして知られ、グラベル、ターマックを問わず、常にトップ争いを演じました。その実力から幾度となくドライバーズタイトルに迫りましたが、悲運にもチャンピオンの座を逃し続けたことから「無冠の帝王」の称号を得ることとなります。

華麗なるキャリア

アレンのキャリアは、モータースポーツ一家に生まれたことが大きく影響しています。父はアイスレースのチャンピオンであり、その影響で幼い頃からモータースポーツに親しみました。1969年にラリーデビューを果たすと、すぐにその才能を開花させます。

ボルボ時代

才能に目をつけたボルボと契約。1000湖ラリー（現在のラリー・フィンランド）で3位入賞を果たすなど、着実に実績を重ねました。

フィアット時代（1974～1981年）

1000湖ラリーでの活躍はフィアットの目に留まり、大型契約を結びます。契約には巨額の契約金に加え、パーソナルフィットネスプログラムも含まれており、これは当時のラリードライバーとしては画期的でした。フィアット・アバルト124ラリー、そして131ラリーを駆り、WRC初優勝（1975年ポルトガルラリー）を含む数々の勝利を挙げました。特に1000湖ラリーでは4年連続優勝を達成するなど、圧倒的な強さをみせつけました。

ランチア時代（1982～1989年）

フィアット撤退後、アレンはランチアに移籍。ランチア・ラリー037、そしてデルタS4、デルタHF4WD、デルタ・インテグラーレと、次々と進化するマシンを駆り、WRCの激闘を繰り広げます。この時代は、アウディやプジョーといった強豪メーカーとの熾烈な争いが繰り広げられましたが、アレンはツール・ド・コルスで勝利を収めるなど、その実力を遺憾なく発揮しました。しかし、グループB時代の終焉や、チーム事情、そして数々のアクシデントに見舞われ、ドライバーズチャンピオンには届きませんでした。特に、1986年のサンレモラリーの結果が取り消されたことにより、「幻のチャンピオン」と呼ばれたことは、アレンのキャリアにおける大きな出来事のひとつとなりました。

スバル・トヨタ時代（1990～1993年）

1990年代に入ると、アレンはスバル、そしてトヨタへ移籍。グループA時代のWRCを戦い抜きました。スバル・レガシィ、トヨタ・セリカ、スバル・インプレッサなどを駆り、ベテランとしての経験と技術を活かし、チームに貢献しました。1993年の1000湖ラリーが、レギュラードライバーとして最後のラリーとなりました。

WRC後の活躍

WRC引退後も、ITC（国際ツーリングカー選手権）、アンドロス・トロフィー、パリ・ダカールラリーなど、様々なモータースポーツイベントに参加し続けました。フェラーリのテストドライバーを務めた経験も持ちます。2001年には、50歳の誕生日を記念してラリー・フィンランドに参戦し、8年ぶりのWRC復帰戦で総合16位という結果を残すなど、その衰えぬ実力を示しました。

まとめ

マルク・アラン・アレンは、WRCの歴史に名を刻んだ偉大なドライバーです。幾多の困難を乗り越え、常にトップレベルで戦い続け、多くのファンに感動を与えました。「無冠の帝王」という称号は、彼の実力と不運を象徴する言葉であり、彼の偉大さをより際立たせています。彼の功績は、これからもラリー界で語り継がれていくでしょう。

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