フィデル・ラバルバ

フィデル・ラバルバ（Fidel LaBarba, 1905年9月29日 - 1981年10月2日）は、アメリカ合衆国出身のプロボクサーである。ニューヨーク州ニューヨーク市ブロンクス区に生を受け、後に世界フライ級の頂点に立った人物として知られる。

7人兄弟姉妹の大家族の五男として育った。4人の兄（ルイス、テッド、トニー、ジョー）と、メアリー、アンナという2人の姉妹がいた。

12歳か13歳を迎える頃から、各地で行われていたアマチュアボクシングのリングに上がり始めた。エルクスクラブなどがその舞台となり、才能を開花させた彼は、1924年を迎えるまでに様々な大会で卓越した記録を打ち立てた。特に同年の6月、フランスのパリで開催されたオリンピックに出場し、ボクシング競技のフライ級で栄えある金メダルを獲得したことは、彼のキャリアにおける最初の大きな勲章となった。

オリンピックでの輝かしい実績を携え、フィデル・ラバルバは1924年10月14日、プロボクサーとしての道を歩み始めた。デビュー戦の相手は44戦の経験を持つベテラン、フランキー・グランデッタであったが、これに4回の判定を経て勝利を収めた。しかし、続く2戦目では後に世界ウェルター級王者となるジミー・マクラーニンにプロ初黒星を喫し、3戦目は引き分け、4戦目は判定勝ちと、プロの洗礼を受ける形でキャリアは始まった。

1925年1月13日、プロ5戦目にして、かつて敗れたジミー・マクラーニンとの再戦が実現した。これはマクラーニンが保持する太平洋沿岸王座（現在の地域王座に相当）をかけた一戦であったが、激闘の末、10回の判定により再び苦杯をなめた。しかし、ラバルバは挫けず、同年2月20日にはフィリピンのヤング・ナショナリスタとの激戦を10回判定で制するなど、粘り強いファイトを見せた。その後も引き分けを挟みつつ4戦で3勝1分と再び勢いをつけ、ビッグチャンスを引き寄せた。

1925年8月22日、フィデル・ラバルバはついに世界の頂点へ挑戦する機会を得る。相手はフランキー・ジェナロ。この一戦に10回判定で勝利したことで、彼は空位となっていたNBA（現在のWBAの前身の一つ）認定世界フライ級王座、そしてアメリカフライ級王座の二つのベルトを同時に獲得した。これはオリンピック金メダリストがプロでも世界王者となった稀有な例となった。

世界王者となった後、ラバルバは1926年7月7日にジョージー・リバースを相手に初防衛戦を行い、これを10回判定で退け、王座を守った。さらに、1927年1月21日には、欧州、英連邦、英国のフライ級王者を兼ねるスコットランドのエルキー・クラークと、文字通りの世界統一王座決定戦で対戦した。この歴史的な一戦を12回判定で制し、ラバルバはフライ級における紛れもない世界チャンピオンとなった。

しかし、頂点を極めたラバルバは、1927年8月23日、突如として保持していた王座を返上することを発表した。その背景には、学業への専念があったとされる。彼はスタンフォード大学に入学するため、約1年間リングから離れる決断をしたのである。ボクシングキャリアの最盛期に異色の選択をしたことは、当時のボクシング界で大きな話題となった。

大学での学びを経てリングに戻ったラバルバは、再びプロボクサーとして活動を再開した。復帰後のキャリアでは、以前のような圧倒的な戦績とはいかなかったものの、幾度かの敗戦を経験しながらも戦い続け、1933年2月13日の試合を最後に、プロボクシングの世界から静かに身を引いた。

プロキャリアの通算戦績は、94戦を戦い、72勝（うち15KO）15敗7分の記録を残した。アマチュア時代の戦績は詳細が明らかではないが、オリンピックでの金メダルという輝かしい功績を残している。

競技生活から退いた後、フィデル・ラバルバはカリフォルニア州ロサンゼルスに移り住んだ。そして1981年10月2日、76歳の生涯を閉じた。オリンピック金メダリストにしてプロ世界王者という、ボクシング史に名を刻むキャリアを歩んだ人物として、その功績は今も語り継がれている。

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