フィリップ・ジョーンズ

フィリップ・ジョーンズとは

イギリスが誇るトランペット奏者であり、国際的に名高い金管アンサンブル、フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル（PJBE）の創設者・主宰者として知られるフィリップ・ジョーンズ（Philip Jones, 1928年 - 2000年）。彼は、アーネスト・ホール以来のイギリスにおけるトランペット演奏の伝統を受け継ぎ、現代に伝えた重要な音楽家と評価されています。

音楽家への道

1928年3月12日、イギリス南西部のサマセット州バースに生まれたジョーンズは、幼い頃から音楽の才能を示しました。1944年には奨学金を得て、ロンドンの名門校である王立音楽大学に進学。ここで専門的な指導を受け、トランペット奏者としての揺るぎない基礎を築き上げました。

オーケストラでの輝かしいキャリア

大学卒業後、ジョーンズはロンドンの主要なオーケストラで首席トランペット奏者として目覚ましい活躍を遂げました。そのキャリアは多岐にわたり、1956年から1960年にはロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、続く1960年から1964年にはフィルハーモニア管弦楽団の首席トランペット奏者を務めました。さらに、1965年から1967年にはニュー・フィルハーモニア管弦楽団、そして1967年から1971年まではBBC交響楽団の首席奏者を歴任しました。これらのトップレベルのオーケストラでの経験は、彼に卓越した演奏技術と高度なアンサンブル能力をもたらし、その後の活動の貴重な糧となりました。

フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル（PJBE）の創設と発展

オーケストラでの活動と並行して、ジョーンズは金管楽器のみによる室内楽の可能性に強い関心を寄せていました。そして1951年、彼の音楽家人生における最も重要な功績の一つとなるフィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル（PJBE）を結成します。当時の金管アンサンブルは、プロジェクト的な単発活動が中心でしたが、PJBEは安定したメンバー構成で定期的な演奏活動を行い、録音も積極的に行うなど、プロフェッショナルな金管アンサンブルのモデルケースとなりました。これは、継続的に活動した最初期の金管アンサンブルの一つとして、ジャンル全体の発展においてパイオニア的な意義を持ちます。ジョーンズ自身も、1971年以降はオーケストラのポストを離れ、PJBEの活動に全力を注ぎました。PJBEは、古楽から現代曲まで幅広いレパートリーと、圧倒的な演奏水準によって瞬く間に国際的な名声を獲得しました。世界各地で精力的にツアーを行い、数多くの作曲家がPJBEのために新たな作品を生み出すなど、金管アンサンブルの地平を大きく広げました。PJBEに関する詳細については、関連項目をご参照ください。

国家からの顕彰

長年にわたる音楽への貢献が高く評価され、フィリップ・ジョーンズはイギリス政府から勲章を授与されています。1977年には大英帝国勲章の下級勲爵士（Officer, OBE）を受章。さらに1986年には、その功績が改めて認められ、より上位の階級である下級勲爵士（Commander, CBE）に昇叙されました。これらの栄誉は、彼がイギリス音楽界、特にブラス音楽界に与えた影響の大きさを物語るものです。

演奏活動からの引退と教育への献身

輝かしいキャリアを歩んでいたジョーンズですが、1986年に予期せぬ出来事が彼の人生の転機となります。彼は自身の愛用するトランペットケースを誤って自動車で轢いてしまうという不運に見舞われました。この事故を、演奏家としての活動からの引退を決意する運命的な兆候と捉えた彼は、同年、惜しまれつつも第一線での演奏活動を終えることを発表しました。しかし、音楽への情熱が尽きることはなく、彼は活動の場を後進の指導や音楽教育機関の運営へと移しました。王立北部音楽大学やトリニティ国立音楽院で教鞭を執り、未来の音楽家たちの育成に尽力しました。特にトリニティ国立音楽院では、1994年まで院長を務め、教育者・運営者としても多大な貢献を果たしました。また、1995年には音楽家慈善基金の総裁を務めるなど、イギリス音楽界全体の発展のために幅広い活動を続けました。

* 晩年と残された遺産

演奏活動からの引退後は、スイスとロンドンを往復しながら静かな生活を送りました。彼はその生涯を音楽に捧げ、特にイギリスのブラス音楽、そして金管アンサンブルというジャンルの発展に計り知れない貢献をしました。2000年1月17日、71歳で逝去しました。フィリップ・ジョーンズがPJBEを通して確立した金管アンサンブルの演奏スタイルやレパートリー、そして彼が残した多くの録音や教えは、今日のブラス音楽の世界に多大な影響を与え続け、彼の名は常にこの分野のパイオニアとして語り継がれています。

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