フィリピコス・バルダネス

フィリピコス・バルダネスは、711年から713年まで東ローマ帝国の皇帝として在位した人物です。彼の出自はペルガモン出身のアルメニア系であり、元々はバルダネスという名前でした。父のニケフォロスはパトリキオスという高位の爵位を持っており、彼自身も同様にパトリキオスの地位にあったとされています。

政治的な経歴は波乱に満ちており、ティベリオス3世によってケファレニア島に一時追放されましたが、後にユスティニアノス2世によって召還されました。しかし、711年には再びケルソンに追放されることになります。この時、ユスティニアノス2世は復讐のためにケルソンに艦隊を派遣しましたが、この艦隊がケルソン市民と呼応して反旗を翻し、バルダネスを新たな皇帝として擁立しました。

皇帝として即位したフィリピコスは、単意説を支持し、第3コンスタンティノポリス公会議の決議を破棄しました。この政策は多くの人々の不満を招き、国内の支持を失う一因となりました。さらに、外政においても苦戦を強いられました。小アジア半島内部に侵攻してきたウマイヤ朝の軍や、トラキア地方に侵攻してきた第一次ブルガリア帝国の軍に対し、効果的な対応を取ることができませんでした。

これらの内外の状況から、アルテミオス（後のアナスタシオス2世）らによる陰謀が企てられることになりました。713年のペンテコステの前日、コンスタンティノポリスの市民たちとの会食後、休憩していたところをテマの兵士やサーカス党派の人々に襲撃され、馬車競技場に幽閉されました。そして、そこで盲目にされてしまいました。翌日にはアルテミオスがフィリピコスの後を継いで皇帝に即位しました。

フィリピコス・バルダネスの治世は、宗教政策の混乱と外敵への対応の失敗から、短期間で終焉を迎えました。彼の生涯は、東ローマ帝国の政治的混乱と宗教的な対立が複雑に絡み合っていた時代を象徴するものと言えるでしょう。

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