フェイクファー (アルバム)

スピッツ アルバム『フェイクファー』

『フェイクファー』は、日本のロックバンド、スピッツが1998年3月25日にリリースした通算8枚目のオリジナルアルバムです。前作までのプロデューサー、笹路正徳氏から離れ、メンバー主導での制作に大きく舵を切った作品として知られています。初回盤はスリップケースと乳白色トレイという特別な仕様でリリースされました。

制作の背景

前作まで約4年間プロデュースを担当した笹路正徳氏から離れ、本作はほぼセルフプロデュースとなりました。しかし、完全にメンバーのみで制作したわけではなく、サポーターとして当時カーネーションのメンバーだった棚谷祐一氏を迎え、アレンジを共同で行いました。棚谷氏の起用は、メンバーがカーネーションの音楽を好んでいたことが理由です。しかし、リーダーシップを発揮する笹路氏と異なり、メンバー寄りの立場の棚谷氏とのレコーディングは、難航する場面もあったとされています。エンジニアには、『空の飛び方』や『ハチミツ』を担当した宮島哲博氏が再び起用されています。

レコーディングでは、草野マサムネが『Crispy!』以降、ほとんど弾いていなかったギターを本作で再び演奏するようになりました。また、当時はリフに凝っていたこともあり、楽曲中にはギターの印象的なフレーズが数多く登場します。

ジャケットと歌詞カード

アルバムのカバーモデルには、田島絵里香さんが起用されました。メンバー自らが面接を行い、選出された初の試みでした。草野マサムネが「自信作」と語るジャケットは、キャミソール姿のモデルが印象的ですが、撮影時期は冬で、前日に大雪が降ったというエピソードがあります。

歌詞カードは、全て草野マサムネ本人の手書きによるものです。歌詞以外の部分の手書き文字は、アートディレクション・デザイン担当の木村豊氏が、草野の字体を真似て制作しました。

リマスター盤

オリジナル盤は廃盤となり、2002年10月16日にロサンゼルスのエンジニア、スティーヴン・マーカソン氏によるリマスタリングが施され、再発されました。この再発盤には、元ROCKIN'ON JAPANの鹿野淳氏によるライナーノーツが封入されています。

収録曲と楽曲解説

1. エトランゼ
- スローテンポな短い曲で、次曲への繋ぎの役割を果たしています。後にリミックスバージョンが20thシングル「流れ星」のカップリングとして収録され、そちらは8分を超える大作となっています。当初は完全なア・カペラにする案も存在しました。

2. センチメンタル
- 前曲から一転、ロック色の強い楽曲です。Bメロ部分では、1弦開放のE音と2弦開放のB音を組み合わせたフレーズが多用されています。

3. 冷たい頬
- 「謝々!」との両A面で先行リリースされた18thシングル。当初はシングル化の予定はありませんでしたが、アルバム発売の1週間前に急遽リリースされました。

4. 運命の人 (Album Version)
- 17thシングルとしてリリースされた楽曲ですが、メンバーが仕上がりに納得いかず、アルバムには再レコーディングされたものが収録されています。シングルバージョンよりもキーが半音下げられています。

5. 仲良し
- 17thシングル「運命の人」のカップリング曲。当初、草野はA面候補として制作していました。ギターの音の配置がシングル版と異なっていますが、特に理由はなく、遊び心によるものとされています。アニメ『ハチミツとクローバー』の挿入歌としても使用されました。

6. 楓
- 後に19thシングルとして「スピカ」との両A面でリカットされました。

7. スーパーノヴァ
- バイクをテーマにしたハードなナンバー。仮タイトルは「スーパーカブ・デビル」でした。「革命」といったそれまで歌詞で避けていた言葉を使用しています。

8. ただ春を待つ
- 変拍子で構成された楽曲。仮タイトルは「環八ラバーズ」。渋滞に巻き込まれるカップルのイライラを歌にしようと思ったことがきっかけで制作されました。「環八ラバーズ」は、後にスピッツとその関係者が結成した草野球チームの名前にもなっています。

9. 謝々!
- 「冷たい頬」との両A面で先行リリースされた18thシングル。ホーンセクションと女性コーラスが加えられています。

10. ウィリー
- 間奏の直前に、小さな音で三輪テツヤの叫び声が入っています。仮タイトルは「ドキンちゃん」でした。

11. スカーレット (Album Mix)
- 15thシングルとしてリリースされた楽曲で、笹路正徳プロデューサーとの最後のシングルです。アルバムでは宮島哲博氏によってリミックスされています。シングル版と比較して、ギターの定位やバランスが変更されています。

12. フェイクファー
- タイトルチューン。イントロのギターは草野マサムネが担当しています。

アナログ盤

限定アナログ盤が1998年7月7日にリリースされました。ホワイト・クリア・ビニール仕様で、ひとし&ザ・ゆたかによるオリジナルコミックが収録されています。

参加ミュージシャン

草野マサムネ：ボーカル、ギター、ギターソロ (12)
三輪テツヤ：ギター、叫び声 (10)
田村明浩：ベース、Fender VIソロ (3)
崎山龍男：ドラム、パーカッション
棚谷祐一：アコースティックピアノ、オルガン、シンセサイザー、サンプラー、プログラミング
笹路正徳：キーボード (11)
三沢泉：パーカッション (2, 8, 9)
田村玄一：ペダルスティール (6)
数原晋、横山均、白山文男：トランペット (9)
中川英二郎、松本治、清岡太郎：トロンボーン (9)
E-Cups（坂井利依子、鈴木清華、柴田章子）：バックグラウンドボーカル (9)
飯田高広 (blue sofa)：プログラミング (1)
伊藤俊治 (HAM)：プログラミング (5)

参考文献

MdN編集部『スピッツのデザイン』（初版）エムディエヌコーポレーション、2018年2月11日。ISBN 9784844367109。

外部リンク

* フェイクファー ｜ SPITZ OFFICIAL WEB SITE

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