フェドン・キジキス

フェドン・キジキス：ギリシャ軍事政権下の大統領、そして民政移管への道

フェドン・キジキス（1917年6月16日 - 1999年7月27日）は、ギリシャの軍人であり、政治家です。彼は、軍事政権下で大統領という重責を担い、その後のギリシャ現代史における重要な局面で役割を果たしました。

生涯と軍人としてのキャリア

キジキスは1917年にヴォロスで生まれ、軍人の道を歩み始めました。1967年のクーデターでは、ゲオルギオス・パパドプロスに従い、その後の軍事政権において要職を歴任しました。

大統領就任と名目上の権力

1973年、ディミトリオス・イオアニディス率いる軍事治安警察（ESA）がクーデターを起こし、パパドプロス政権は崩壊しました。キジキスは、このクーデターの首謀者によって大統領に任命されましたが、その権力は名目的なものに過ぎませんでした。実質的な権力はイオアニディスらに握られていました。

キプロス危機と民政移管への決断

1974年7月15日、キプロスでニコス・サンプソン率いるギリシャ人民兵が決起し、マカリオス3世大統領を追放しました。この動きを背後で支援していたのがギリシャ軍事政権でした。しかし、トルコがトルコ系住民の保護を名目に北部キプロスへ出兵したことで事態は急変します。このトルコの介入をきっかけに、それまで軍事政権に不満を抱きながらも従っていた海軍と空軍が離反し、陸軍と秘密警察ESAは孤立しました。

危機的な状況の中、キジキスは7月23日に軍首脳と有力政治家を集めて会議を開き、民政移管を決断しました。そして、フランスへ亡命していたコンスタンディノス・カラマンリスを呼び戻し、首相に指名しました。この決断が、その後のギリシャにおける民主化への道を開くことになります。

メタポリテフシとその後

キジキスは、11月17日の総選挙と、共和制移行を正式に決定した12月8日の国民投票を見届け、12月18日に大統領職を文民のミハイル・スタシノプロスに委譲して引退しました。ギリシャでは、軍事政権から第三共和制への移行期を「メタポリテフシ」と呼びますが、キジキスはまさにこのメタポリテフシの引き金を引いた人物と言えるでしょう。

1999年7月27日、キジキスはゲオルギオス・パパドプロスの死からちょうど1ヶ月後に死去しました。彼の人生は、ギリシャ現代史における激動の時代を象徴するものとして、記憶されています。

もう一度検索