フェラーリ・126C3

フェラーリ126C3：カーボンファイバー革命と栄光への挑戦

1983年、スクーデリア・フェラーリはF1世界選手権に、革新的な技術を搭載した126C3で挑みました。このマシンは、ハーベイ・ポスルスウェイトの設計によるフェラーリ初のカーボンファイバー製モノコックシャーシを採用したことで知られています。120度のバンク角を持つV6ターボエンジンを搭載し、126CK、126C2に続くV6ツインターボエンジンの系譜を受け継いでいました。

革新的なモノコック構造

126C3の最大の特徴は、そのシャーシ構造です。従来のアルミハニカムモノコックに代わり、カーボンファイバー製のモノコックを採用しました。この設計は、グスタフ・ブルナーがATS・D6で用いたメス型成型モノコックから着想を得たもので、上下2分割されたものを組み合わせる構造となっていました。この新技術は、マシンの軽量化と剛性向上に大きく貢献しました。また、当時流行し始めたレース中の燃料再給油戦術に対応するため、ブラバムのゴードン・マレーが考案した給油口が燃料タンクの右側に設けられていました。

エアロダイナミクス面では、フラットボトム規制に対応した126C2Bと類似した設計が採用されていました。リアウィングの翼端板には、子持ちウィング（ウィングレット）が装備され、ダウンフォースの向上に寄与しました。サイドポンツーンは、ラジエターの配置を見直すことで小型化され、126C2Bと似た先端の低いタイプも使用されました。

シーズン後半戦での活躍

126C3は、シーズン第9戦イギリスグランプリから投入されました。デビュー戦でルネ・アルヌーがポールポジション、パトリック・タンベイが2位を獲得し、フロントローを独占するという好スタートを切ります。その後も活躍は続き、第10戦ドイツグランプリではアルヌーが優勝。第12戦オランダグランプリではアルヌーとタンベイがワンツーフィニッシュを達成しました。

カナダグランプリから6戦連続入賞（うち3勝）と圧倒的な強さをみせたアルヌーは、最終的にポイントランキング3位を獲得。シーズン終盤には、ランキング首位のアラン・プロスト（ルノー）に2点差まで迫るなど、ドライバーズチャンピオン獲得の可能性も十分にありました。しかし、最終2戦で無得点に終わり、チャンピオンの座はネルソン・ピケ（ブラバム）に奪われました。タンベイも3回のポールポジションを獲得するなど活躍を見せましたが、決勝でのリタイアが多く、アルヌーには届きませんでした。

しかし、フェラーリチーム全体としては安定した成績を収め、アルヌー3位、タンベイ4位というドライバーズランキングの結果、そして1982年に続くコンストラクターズ選手権連覇という素晴らしい結果を残しました。アルヌーは引退後、この1983年シーズンを「最後までチャンピオンの可能性があった素晴らしいシーズンで、自身のキャリアの中で決して忘れない思い出だ」と振り返っています。

スペック

シャーシ: 126C3 (カーボンファイバー製モノコック)
ホイールベース: 2,660 mm
前トレッド: 1,768.4 mm
後トレッド: 1,666 mm
エンジン: Tipo021 (V型6気筒ターボ、120度、1,496.4cc、600馬力以上)
ギヤボックス: 5速横置きマニュアル
タイヤ: グッドイヤー
ブレーキキャリパー: ブレンボ
クラッチ: ボーク＆ベック
スパークプラグ: チャンピオン
* 燃料・潤滑油: Agip

126C3は、革新的な技術とドライバーたちの活躍によって、F1の歴史に名を刻んだ一台と言えるでしょう。その功績は、フェラーリの歴史においても重要な位置を占めています。

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