フェラーリ・246F1

フェラーリ246F1/256F1：フロントエンジンの雄たけびとミッドシップ時代への序章

フェラーリ246F1は、スクーデリア・フェラーリが1958年から1960年にかけてF1世界選手権を戦ったフォーミュラ1カーです。246という車名には、搭載される2400ccの6気筒エンジンの排気量と気筒数を表しています。 創設者エンツォ・フェラーリの長男、アルフレード・フェラーリの愛称にちなんで「ディーノ246F1」と呼ばれることもあります。本稿では、発展型の256F1についても併せて解説します。

開発：技術革新と伝統の狭間

F1レギュレーションの改訂により、1958年はアルコール燃料の使用が禁止され、航空機用ガソリン（Avgas）が義務化されました。同時に、決勝レースの最低走行距離が500kmから300kmに短縮されたことで、よりコンパクトなマシン設計が可能になりました。フェラーリは、F2用に開発していたV型6気筒1.5リットルエンジンをベースに排気量アップという戦略を選びました。

開発はヴィットリオ・ヤーノが指揮を執り、アルベルト・マッシミーノがシャシー、ルイジ・ベレンターニがエンジン設計を担当しました。65度のバンク角を持つ特徴的な「ディーノV6エンジン」は、アルフレード・フェラーリの意見を反映して設計され、1957年の156F2から始まり、1.9リットル、2.2リットルを経て2.4リットルへと進化を遂げました。このエンジンはその後、ロードカーのディーノシリーズにも受け継がれることになります。

1958年シーズンは246F1で開幕戦から参戦。終盤には排気量を増加し、ダンロップ製ディスクブレーキを装備した256F1が登場しました。1959年にはカルロ・キティの指揮の下、ファントゥッツィ製アルミニウムボディの採用やサスペンションの改良などが行われました。1960年には、リアのド・ディオンアクスルが廃止され、前後独立懸架式サスペンションへと進化しました。この年は、ミッドシップレイアウトの試作車246Pも2戦に参戦しています。

戦績：栄光と悲劇、そして時代の転換点

1958年

開幕2戦では、ミッドシップレイアウトのクーパーに敗れ、その後はヴァンウォールとの激しいタイトル争いが展開されました。クーパーやヴァンウォールといったイギリス勢は、ミッドシップレイアウトやディスクブレーキ、マグネシウムホイールといった技術革新に積極的に取り組み、エンジンパワーの不足を補っていました。これに対しフェラーリは、強力なエンジンを有しながらも、ドラムブレーキとスポークホイールを使い続けるなど、技術面での遅れを取っていました。

さらに、前年に続きドライバーの死亡事故が発生。フランスグランプリではルイジ・ムッソが事故死し、イギリスグランプリ優勝者のピーター・コリンズもドイツグランプリで事故死しました。そのため、スポーツカー部門のドライバーが起用される事態となりました。マイク・ホーソーンは、コリンズの愛車250GTに装備されていたディスクブレーキを参考に、256F1へのディスクブレーキ装着を認めさせ、年間1勝ながら2位5回という堅実な走りでドライバーズチャンピオンを獲得しました。コンストラクターズタイトルはヴァンウォールが獲得しました。

1959年-1960年

1959年は、クーパーのジャック・ブラバムがミッドシップマシンの優位性を示す中、フェラーリは依然としてフロントエンジンの256F1で戦いました。トニー・ブルックスが2勝を挙げる活躍を見せましたが、最終戦でタイトルを逃しました。

1960年になると、256F1の戦闘力は低下し、チームは翌年から導入される1.5リットルエンジン規定を見据え、ミッドシップマシンの開発に注力しました。最終戦のイタリアグランプリでは1-2-3フィニッシュを達成しましたが、これはモンツァサーキットの危険性からイギリス勢が欠場したことが大きく影響しました。この勝利は、F1におけるフロントエンジン車の最後の勝利となりました。

スペック

以下に、246F1と256F1の主要諸元を示します。


フェラーリ246F1/256F1は、F1の歴史において重要な転換期を象徴するマシンと言えるでしょう。フロントエンジンの最後の輝きと、ミッドシップ時代への移行というドラマを凝縮した存在なのです。

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