フェラーリ・250TR

フェラーリ250TR：赤い頭を持つ伝説のレーシングマシン

1958年、世界スポーツカー選手権のレギュレーション変更により、排気量が3リットルに制限されることになりました。これを受け、スクーデリア・フェラーリは新たなレーシングマシンの開発に着手します。その結果誕生したのが、250TR（テスタロッサ）です。

開発の経緯

当時、フェラーリは複数のエンジン候補を検討していました。しかし、開発期間の短縮や扱いやすさなどを考慮し、既存の250GTのSOHC V型12気筒エンジンをベースに、改良を加えることになりました。

改良点は多岐に渡ります。点火プラグの位置変更、ウェーバー製キャブレターの搭載、バルブ径の拡大、軽量コンロッドやピストンの採用など、徹底的なチューニングが施されました。これらの改良により、最高出力は240～260bhpから300bhp/7,200rpmに向上しました。

開発中に、新型エンジンのカムカバーを赤く塗っていたことから、「テスタロッサ」（赤い頭）という愛称が付けられ、それが車名の一部となりました。250は、一気筒当たりの排気量を表しています。しかし、初期型の250TRはピストンにクラックが入るトラブルに見舞われ、レースでの成績は振るいませんでした。

シャシは、航空機用の太い鋼管を使用したラダーフレームを採用。サスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーンとコイル、リアはド・ディオンアクスルまたはリジットアクスルが選択可能でした。市販車はリジットアクスルのみが採用されています。

市販車とレース車

1958年までに、TR/57と呼ばれる市販車が19台製造されました。ボディはスカリエッティによるアルミニウム製で、特徴的なポンツーンフェンダーが備わっていました。ブレーキは前後ともアルフィン付ドラムブレーキです。

一方、ワークスチームが使用したレース車は、プロトタイプ2台を含む計15台が製作されました。初期のプロトタイプを除き、ダンロップ製の4輪ディスクブレーキが採用されています。TR/59以降は、ピニンファリーナによるデザインに変更され、ディスクブレーキの採用に伴いポンツーンフェンダーは廃止され、より流麗なボディラインとなりました。

TR/60では、独立サスペンションが採用され、レギュレーション変更に対応してウインドシールドも大型化されました。TR/61では、特徴的な山猫スタイルのボディが採用されました。

そして、4リットルエンジンを搭載した330LM/TRIは、1962年のル・マン24時間レースで優勝。フロントエンジン車としては最後の優勝を飾ったマシンとなりました。

250TRのスペック

エンジン：SOHC V型12気筒
最高出力：300bhp/7,200rpm
シャシ：鋼管ラダーフレーム
サスペンション：フロント ダブルウィッシュボーン、リア ド・ディオンアクスル/リジットアクスル
ホイールベース：2,350mm
乾燥重量：800kg
* トランスミッション：4速MT

250TRは、フェラーリの技術力の高さ、そして美しいデザインを象徴するモデルです。その活躍は、モータースポーツの歴史に大きな足跡を残しました。

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