フェラーリ・333SP

フェラーリ333SP：伝説のスポーツプロトタイプ

1994年、フェラーリは長きにわたるF1活動の傍ら、21年ぶりのスポーツカーレースへの復帰を果たしました。その象徴として誕生したのが、333SPです。このマシンは、アメリカで開催されたIMSA GT選手権のWSC（ワールドスポーツカー）クラス参戦を目的として開発されました。 名前の由来である「333」は、フェラーリがかつて採用していた、1気筒あたりの排気量に基づく命名規則に則ったものです。

開発と技術

333SPの開発は、レーシングドライバーでもあったMOMO社の社長ジャンピエロ・モレッティ氏の提案から始まりました。彼はフェラーリ副社長のピエロ・ラルディ・フェラーリ氏に、このプロジェクトの構想を打ち出したのです。開発はF1部門ではなく、フェラーリの関連会社であるフェラーリ・エンジニアリングが担当。ジャンパオロ・ダラーラ氏とトニー・サウスゲート氏がデザインを手がけ、ダラーラ社が製造を担当しました。後期型はミケロット社が担当しています。

心臓部となるエンジンは、当時開発中だったロードカーF50用の4.7リットルV型12気筒自然吸気エンジンをベースに、WSCの規定である4.0リットルに排気量を調整したF130E型です。最高出力は650馬力/11,000rpm、最大トルクは45kgm/9,000rpmを誇りました。このエンジンは、1992年F1マシンF92Aに搭載された040型エンジンをルーツとしています。シャシーはカーボンコンポジットとアルミハニカム構造のセンターモノコックを採用し、5速シーケンシャル式ミッションと組み合わされました。サスペンションは前後ともF1で採用されているプッシュロッド式でした。

当初、WSCのレギュレーションでは市販車の4リットル以下のエンジンを使用することが義務付けられていましたが、F50の発売前だったため、4.7リットルエンジン搭載の333SPはIMSAから特例として参戦を認められました。これは、フェラーリの参戦がシリーズ全体の盛り上げに大きく貢献すると判断されたためです。しかし、333SPの圧倒的な強さから、後にエンジンのレブリミットが11,500rpmから11,000rpmに制限され、吸気制限のためのエア・リストリクターの装着も義務付けられました。

輝かしい戦績とプライベーターへの供給

333SPはフェラーリ自身によるワークス参戦ではなく、プライベーターへの供給とサポートという形でレース活動が行われました。1994年、IMSA第3戦ロードアトランタでデビュー戦を飾り、見事ワンツーフィニッシュを達成。この年は5勝を挙げ、シリーズ2位という好成績を収めました。翌1995年には、デイトナ24時間レース、セブリング12時間レースにも参戦。デイトナではリタイヤに終わりましたが、セブリングでは23年ぶりの優勝を飾りました。この年は5勝を挙げ、ドライバーズ、マニュファクチャラーズ両タイトルを獲得しました。

ル・マン24時間レースにも参戦し、1973年以来となるプロトタイプでの参戦を果たしましたが、エンジントラブルによりリタイヤとなりました。その後もル・マンに参戦し、ファステストラップ記録や上位入賞を果たしています。セブリング12時間レースでは1997年と1998年に優勝、デイトナ24時間レースでは1998年に27年ぶりの優勝を飾りました。 また、欧州のスポーツカーレースにも参戦し、数々の勝利とタイトルを獲得しました。

現代における333SP

ポルシェ962Cのように、333SPも多くのプライベーターに愛用され、長期間にわたって活躍しました。現在では、中古で購入された多くの333SPがフェラーリの「コルセ・クリエンティ」部門によるサポートを受け、世界中のサーキットでフェラーリ主催のイベントに参加し、その勇姿を現代に伝えています。 そのパフォーマンスと歴史的価値から、今もなお、多くのファンを魅了し続けている名車と言えるでしょう。

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