フェリクス・フォン・ルックナー

フェリクス・フォン・ルックナーの生涯

フェリクス・ニコラウス・アレクサンダー・ゲオルク・グラーフ・フォン・ルックナー（1881年6月9日 - 1966年4月13日）は、ドイツの海軍軍人であり冒険家としても知られています。特に第一次世界大戦中に、武装帆船ゼーアドラー号を指揮して多くの商船を拿捕したことから、彼は「海の悪魔」と称されるようになりました。ただし、彼は実戦においても駆使した騎士道精神により、自艦の乗組員や敵兵に対してほとんど死傷者を出さなかったとされています。

前半生と海軍への道

ルックナーは、ドレスデン近郊の裕福な伯爵家に生まれましたが、幼少期から海に魅了され、海軍士官としての夢を抱いて育ちました。13歳の時、彼は家出し、ロシア船籍の帆船であるニオベ号のキャビンボーイとしての冒険を始めます。その後、7年間にわたり様々な職に就きましたが、主に水夫として生活し、3800マルクを貯金してドイツに帰国しました。

帰国後、ルックナーはリューベックで航海士の訓練を受け、商船船員として働く中で海軍への志願を果たしました。1905年には予備海軍士官として海軍に入隊し、さらに成長を続けました。特に、1912年にはプロイセン号に配属され、西アフリカでの任務も経験しました。このころ、ドイツ人実業家の娘イルマに恋し、帰国後に婚約を交わしました。

第一次世界大戦とゼーアドラー号

1914年、第一次世界大戦が勃発し、ルックナーは海戦に参加。しかし、ドイツ艦隊がイギリス艦隊に劣勢を強いられる中、ドイツ海軍は通商破壊戦に転じ、ルックナーは帆船ゼーアドラー号の指揮を託されます。ゼーアドラー号は、アメリカ船籍の帆船を改造して作られた仮装巡洋艦で、敵艦隊への潜入を目指しました。ルックナーはノルウェー商船に忍び込んで航海日誌を盗むなどの工夫を凝らし、ついに封鎖を突破。

1916年12月21日、彼はゼーアドラー号を率いて出航し、その後の航海で数多くの商船を拿捕しました。彼の手法は、相手船に接近し、急にドイツ軍旗を掲げて攻撃するというものでした。ゼーアドラー号は数十隻を拿捕し、多くの商船を撃沈、その結果、彼に「海の悪魔」という称号が与えられました。

太平洋への航海と座礁

太平洋に出るも、次第に行動が制限され、食料や水が不足してくる中で、ルックナーはソシエテ諸島へ向かいました。しかし、ゼーアドラー号はモペリア環礁で座礁、破損してしまいます。彼は船と離れ、救命ボートを使って近くの島へ向かい、独自の脱出計画を立てます。ルックナーは最終的に逮捕されるものの、その後の捕虜生活や脱走計画には知恵を絞り、多くの艱難を乗り越えてゆきました。

戦後の生活と影響

戦後、ルックナーは故郷に戻り、その勇敢な行動は広く評価されました。彼は各地で講演や著作を行い、1943年にはユダヤ人女性を救うなど、その行動は英語圏でも称賛を受けました。晩年はスウェーデンで過ごし、84歳での死を迎えます。彼の埋葬先はハンブルクのオールスドルフ墓地です。ルックナーの生涯は、海軍士官としての夢と果敢な冒険に満ち、歴史に名を残すこととなりました。彼の平和的な理解や人道的行動も評価され、今なお多くの人々に語り継がれています。

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