フェリックス・マリア・スロアガ

フェリックス・マリア・スロアガ・トリーロ（1813年 3月31日 - 1898年 2月11日）は、メキシコの著名な軍人であり、特にレフォルマ戦争における保守派の指導者として知られています。1850年代後半から1860年代初頭にかけて、自由主義派のベニート・フアレスに対抗し、保守勢力の大統領を務めました。

生涯初期と軍歴

スロアガは、現在のソノラ州にあたるアラモスで生を受けました。チワワで初等教育を受けた後、メキシコシティの神学校に進学しましたが、後に退学しています。故郷のチワワに戻った後、1834年に民兵組織に加わり、先住民のアパッチ族やコマンチェ族との戦いに参加しました。

1838年には陸軍に少尉として復帰し、工兵隊に配属されました。彼は菓子戦争やテキサス独立戦争といったメキシコの重要な戦役で活躍しました。当初、政治的には自由主義の立場をとっており、1840年にはアナスタシオ・ブスタマンテ政権を支持していましたが、後にアントニオ・ロペス・デ・サンタ・アナと連携するようになります。ユカタン半島の分離主義勢力との戦いや、モンテレーの要塞化にも関わりました。米墨戦争中はチワワ市の市長を務めています。

1838年に陸軍に再入隊し、メキシコシティ駐屯地の作戦会議の議長に就任しました。准将であった1854年には、アユトラ綱領を支持する自由派勢力との戦いで投獄されました。しかし、1855年にはクエルナバカで樹立された軍事政権下の議会に、チワワ州選出の議員として参加しています。

保守派指導者としての大統領職

当初はプエブラにおける戦役で保守派と対立していたスロアガでしたが、1857年12月17日には立場を転換し、新たに制定された『1857年憲法』への反対を表明しました。そして、将軍たちの軍事政権とカトリック聖職者によるクーデターに参加します。この動きは「タクバヤの陰謀」として知られ、穏健自由主義派の大統領イグナシオ・コモンフォルトはこれを受け入れ、憲法を一時的に停止させました。最高裁判所長官であり副大統領であったベニート・フアレスを含む自由主義者たちは、憲法の規定に基づきフアレスを正統な後継大統領と見なしましたが、彼らは逮捕・投獄されました。

コモンフォルト大統領が最高権力者として宣言したものの、軍事政権の指導者たちは彼に圧力をかけました。1858年1月11日、コモンフォルトの友人でもあったスロアガは大統領の辞任を要求します。コモンフォルトは10日間抵抗しましたが、その間にフアレスを含む投獄されていた自由主義者たちを解放しました。

コモンフォルトによる自由主義者の解放により、フアレスは憲法に則った正統な大統領と見なされることになりました。しかし、スロアガはメキシコシティの軍を掌握していたため、フアレスはグアナフアトに臨時政府を樹立せざるを得なくなります。これが後にレフォルマ戦争と呼ばれる内戦の始まりとなりました。コモンフォルト自身はどの派閥からも支持を失い、国外に亡命しました。

スロアガはその後、反憲法的な議会、保守派の将軍たち、そしてカトリック聖職者の支持を得て、暫定大統領に選出されました。彼は1858年 12月24日まで大統領を務めましたが、遠征中であったミゲル・ミラモン将軍の代理であったマヌエル・ロブレス・ペスエラにその座を譲ります（ナビダ計画）。

ロブレス・ペスエラは大統領職を1859年1月21日まで担い、その3日後の1月24日にスロアガが大統領に復帰しました（この間にホセ・マリアーノ・サラスも短期間保守派大統領を務めたとされます）。スロアガの第2期大統領職は2月1日までと短く、その後はミゲル・ミラモンが権力を握りました。

1860年5月9日、スロアガは再び大統領であることを主張しますが、後にミラモンによって逮捕されました。ミラモンはこの時、スロアガに対し「私があなたに大統領になる方法を教えてあげよう」と述べたと記録されています。スロアガは同年8月6日にレオン・グアナフアトから逃亡し、メキシコシティへの進軍を試みましたが、保守派の統治評議会（軍事政権の議会）は彼を大統領として承認しませんでした。

晩年

レフォルマ戦争が自由主義派の勝利に終わり、フアレス政権が確立されると、スロアガは公職から追放されました。これは、保守派によるメルチョール・オカンポの処刑に責任があると見なされたためです。第二帝政期にはフランス軍と同盟を結ぼうと試みましたが成功せず、1865年にはキューバへ亡命しました。

フアレス大統領の死後、メキシコに帰国しましたが、再び公職に就くことは認められませんでした。帰国後は煙草商として生計を立てました。1898年 2月11日、メキシコシティにてその生涯を終えました。

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