フォアキャスト・トゥモロウ

『フォアキャスト・トゥモロウ』：ウェザー・リポートの全史を網羅する集大成

フュージョン界の伝説的バンド、ウェザー・リポートの輝かしいキャリアを網羅したボックスセット『フォアキャスト・トゥモロウ』（Forecast: Tomorrow）は、CD3枚とDVD1枚で構成された、バンドの音楽的な変遷を深く掘り下げる決定版と言える音源集です。

このセットの核となるCDには、厳選された計37曲が年代順に収められています。特筆すべきは、バンド結成以前の時期に録音された貴重な3曲から物語が始まる点です。そこには、マイルス・デイヴィス・バンドにおけるジョー・ザヴィヌルとウェイン・ショーターの共演、キャノンボール・アダレイ・バンドでのザヴィヌルのプレイ、そしてショーターのソロアルバム『スーパー・ノヴァ』からの楽曲が含まれており、ウェザー・リポートの音楽的なルーツを知る上で非常に重要なピースとなっています。バンドとしての歴史がスタートしてからの音源は、その時々の主要メンバーでの代表曲を中心に収録され、ジャズ、ファンク、ロック、ワールドミュージックなど多様な要素を取り入れながら進化し続けたウェザー・リポートのサウンドの変遷を鮮やかに描き出しています。CDの最後には、ディー・ジェイ・ロジック（DJ Logic）によるウェザー・リポート楽曲の未発表リミックスが特別に収録されており、新たな視点から彼らの音楽を楽しむことができます。

4枚目のディスクは、約2時間にわたる貴重な映像コンテンツであるDVDです。ここには、1978年9月29日にドイツのオッフェンバッハ・アム・マインで行われたコンサートの模様が収録されています。このライブはもともとドイツのテレビ番組「ロックパラスト」のために撮影されたものであり、当時のバンドの熱気あふれるパフォーマンス、特にジョー・ザヴィヌル、ウェイン・ショーター、ジャコ・パストリアス、ピーター・アースキンという強力なラインナップによる演奏を視覚的に捉えることができる、ファンにとっては見逃せない内容となっています。

本ボックスセットには、100ページを超える豪華な解説書が付属しています。セットの編集を手がけたボブ・ベルデンによる詳細な注釈や楽曲解説は、それぞれのトラックの背景や意義を深く理解する助けとなります。さらに、ハル・ミラーによるウェザー・リポートというバンドに関するエッセイ、そして1978年のロックパラスト公演に参加したドラマー、ピーター・アースキンによる当時の回想録も掲載されており、バンドの歴史や各時代の演奏について、多角的な視点から知ることができる資料としても非常に価値が高い一冊です。

参加メンバーは時期によって大きく異なりますが、このセットでは各時代の重要なプレイヤーたちが名を連ねています。以下は、CD各ディスクに収録された主要メンバーおよび特徴的な参加メンバーの一部です。

CD-1: ジョー・ザヴィヌル、ウェイン・ショーターに加え、マイルス・デイヴィス・バンド時代のマイルス・デイヴィス、ジョン・マクラフリン、ハービー・ハンコック、チック・コリア、デーブ・ホランド、トニー・ウィリアムズ、そして初期ウェザー・リポートを支えたミロスラフ・ヴィトウス、アルフォンス・ムザーン、エリック・グラヴァット、ドム・ウム・ロマオなどが参加しています。
CD-2: ジョー・ザヴィヌル、ウェイン・ショーターを中心に、アルフォンソ・ジョンソン、時代の象徴となるベーシスト、ジャコ・パストリアス、そしてドラムのアレックス・アクーニャ、チェスター・トンプソン、パーカッションのマノロ・バドレーナなど、ウェザー・リポートが広く認知されるようになった中核期を代表するメンバーが揃っています。
CD-3: 後期ウェザー・リポートを形成したジョー・ザヴィヌル、ウェイン・ショーター、ジャコ・パストリアス、ピーター・アースキン、ロバート・トーマスJr.、そして後任ベーシストのヴィクター・ベイリー、ドラマーのオマー・ハキムなど、バンドの最終期までの変遷を彩ったプレイヤーたちが参加しています。
DVD (1978年): ウェイン・ショーター（サックス）、ジョー・ザヴィヌル（キーボード）、ジャコ・パストリアス（エレクトリックベース）、ピーター・アースキン（ドラムス）という黄金期カルテットによる演奏です。

『フォアキャスト・トゥモロウ』は、ウェザー・リポートという革新的なバンドの全貌を、音源と映像、そして詳細な解説を通じて包括的に体験できる、ファン必携の貴重なボックスセットです。

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