フォチャ (ボスニア・ヘルツェゴビナ)

フォチャ：ボスニア・ヘルツェゴビナの歴史と現在

フォチャ（Foča）は、ボスニア・ヘルツェゴビナのスルプスカ共和国に属する都市であり、ドリナ川の東岸、フォチャ地方に位置しています。中世にはフヴォチャと呼ばれ、ラグーサ共和国とオスマン帝国の交易拠点として発展しました。

歴史的背景

フォチャは、その歴史の中で幾度となく紛争の舞台となりました。第二次世界大戦中には、セルビア人がウスタシャやムスリム兵によるジェノサイドの対象となり、報復としてチェトニックによる組織的な虐殺も発生しました。ヨシップ・ブロズ・ティトー率いるパルチザンとナチス・ドイツ軍との間で繰り広げられた「スティエスカの戦い」の地でもあり、その戦いを記念するモニュメントがスティエスカ国立公園内に建立されています。

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争

1992年、フォチャはセルビア人勢力の支配下に置かれ、ボシュニャク人に対する民族浄化が行われました。多くのボシュニャク人が殺害または行方不明となり、パルチザン会館は強姦収容所として利用され、多数の女性が組織的に強姦されました。旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷（ICTY）では、セルビア人勢力による民族浄化が認定され、ビリャナ・プラヴシッチによる組織的な大量強姦の事実が明らかにされました。また、ノヴィスラヴ・ジャイッチの法廷では、1992年6月にフォチャ地域でジェノサイドが行われたことが認定されています。

セルビア人勢力は1992年4月22日にアラジャ・モスクを爆破し、16世紀から17世紀にかけて建てられた他のモスクも破壊しました。

デイトン合意とその後

1995年のデイトン合意により、フォチャの一部はフォチャ＝ウスティコリナとして分離。フォチャは一時スルビニェ（セルビア人の地）と改名されましたが、ボスニア・ヘルツェゴビナ憲法裁判所の判決により、元のフォチャに戻されました。

人口構成の変遷

フォチャの人口構成は、歴史的な出来事によって大きく変化しました。1971年にはボシュニャク人が過半数を占めていましたが、紛争を経てセルビア人が多数派となりました。公式な調査は少ないものの、2008年時点での人口は約24,000人と推定され、そのほとんどがセルビア人であると考えられています。

現在のフォチャ

フォチャは現在、フォチャ自治体の中心として、またフォチャ地方の主都として機能しています。スルプスコ・サラエヴォ大学の学部やセルビア正教会の神学校があり、教育・文化の中心地としての役割も担っています。また、ボスニア・ヘルツェゴビナ最古の国立公園であるスティエスカ国立公園は、豊かな自然と歴史的な景観を誇り、観光地としても重要な存在です。

フォチャは、クラグイェヴァツ（セルビア）と姉妹都市提携を結び、国際的な交流も行っています。

まとめ

フォチャは、紛争の歴史を乗り越え、新たな発展を目指しています。民族構成の変化や文化的な遺産の破壊など、多くの困難を経験しましたが、現在は教育機関や国立公園を擁する地方の中心都市として、その存在感を示しています。今後のフォチャが、平和と繁栄を取り戻し、持続可能な発展を遂げることを期待します。

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