フォッカー F.XXXVI

フォッカー F.XXXVI

フォッカー F.XXXVI（Fokker F.XXXVI）は、1930年代にオランダのフォッカー社によって設計・製造された32人乗りの四発旅客機です。本機は、同社が手掛けた中で最大の旅客機となりました。初飛行は1934年6月22日に行われ、登録番号PH-AJAを持つこの機体は、尾輪式の降着装置を備えた高翼仕様の単葉機です。

機体の設計と特長

フォッカー社の伝統に基づき、主翼は完全に木製で作られており、胴体は鋼管構造に羽布張りが施されています。また、主翼前部には4基のライト サイクロン星型エンジンが搭載され、乗員は4名、キャビンには32名の乗客が定員として乗ることができました。フォッカー社の技術者は、離陸後の乗客同士の会話ができる程度の静音性を実現するために、多くの工夫を凝らしました。

この機体はKLMオランダ航空に納入され、1935年3月からヨーロッパの航路で運航されました。ペイロードの能力は十分でしたが、ダグラス DC-2やDC-3と比べて航続距離が短く、全金属製の航空機に比べて整備性が劣ることが明らかになったことから、わずか1機のみが製造される結果となりました。その後、KLMはこの機体をスコティッシュ航空に売却し、スコティッシュ航空はイギリス空軍の初等飛行学校の練習機として運用しました。しかし、1940年に離陸時の事故によって損傷し、その後廃棄されました。

ライセンス生産と販売

イギリスのエアスピード社は、F.XXXVIのライセンス生産権を獲得しましたが、イギリス国内では一機も注文を受けることがありませんでした。このことから、フォッカーF.XXXVIは限定的に流通した機体でしたが、当時の設計思想や航空技術の概念を反映した一例と言えます。

運用状況

民間運用

• - オランダ: KLMオランダ航空
• - イギリス: スコティッシュ航空

軍事運用

• - イギリス: イギリス空軍（スコティッシュ航空による運用）

要目

• - 乗員: 4名
• - 定員: 32名
• - 全長: 24.0 m
• - 全高: 8.3 m
• - 翼幅: 33.0 m
• - 翼面積: 172 m²
• - 空虚重量: 10,300 kg
• - 運用時重量: 16,500 kg
• - 動力: ライト サイクロン SGR-1820-F2空冷星型エンジン × 4基（出力560 kW）

性能

• - 最大速度: 280 km/h（巡航速度）
• - 航続距離: 600 km
• - 離陸滑走距離: 詳細不明
• - 着陸滑走距離: 詳細不明

このように、フォッカー F.XXXVIは技術的には興味深い機体でしたが、実際の運用においてはその限界が早々に見えてしまうこととなりました。航空機の歴史の中で、実用性や整備性が重要視されるようになり、フォッカー F.XXXVIはその流れの中で特異な存在となったのです。

もう一度検索