フォルクスワーゲン・タイプ3

フォルクスワーゲン タイプ3：ビートルに続く、個性的なフォルクスワーゲン

フォルクスワーゲン・タイプ3は、西ドイツのフォルクスワーゲン社が1961年から1973年にかけて生産した、空冷リアエンジン搭載の乗用車です。販売当初は排気量からVW1500、後にVW1600と呼ばれていましたが、現在ではビートル（タイプ1）、トランスポーター（タイプ2）、タイプ4と区別するため「タイプ3」として広く知られています。

タイプ3の個性：広々とした空間と実用性

タイプ3は、ビートルと同じ2,400mmのホイールベースを採用しながらも、当時としてはモダンなフルワイズ・フラッシュサイド型のボディデザインを実現しました。ビートルと比較して格段に広い室内空間とトランクスペースは、乗員や荷物の運搬に大きなアドバンテージをもたらしました。この実用性は、多くのユーザーにとって魅力的なポイントでした。

惜しまれる競争力の不足

しかし、タイプ3は市場で成功を収めるには至りませんでした。その要因としては、当時の主流であった水冷エンジン車に比べて、空冷エンジンゆえのヒーター性能や騒音の問題、そして汎用性の高い4ドアモデルの欠如などが挙げられます。これらの点において、同時代の競合他社製品に競争力を劣っていたといえるでしょう。また、長年にわたる人気を誇るビートルに取って代わる存在にもなりませんでした。 当時の中級乗用車市場において、空冷エンジンは少数派であったことも不利に働きました。

タイプ3の進化：ファストバックと燃料噴射エンジン

市場での競争力を高めるため、フォルクスワーゲンはタイプ3に様々な改良を加えました。1965年にはファストバックボディのモデルが追加され、ノッチバック型を「L」、ファストバック型を「TL」と命名。さらに、世界初の量産型電子制御燃料噴射エンジンを搭載した「1600LE/1600TLE」も登場しました。これは、当時としては画期的な技術でした。これらの改良は、タイプ3のパフォーマンスと魅力を向上させることに貢献しましたが、市場での挽回には至りませんでした。

タイプ3のメカニズム：進化した空冷エンジンとサスペンション

タイプ3は、ビートルと共通の空冷水平対向4気筒エンジンを搭載していましたが、単純な流用ではありませんでした。冷却システムの改良によりエンジン全高が低く抑えられ、「パンケーキエンジン」と呼ばれるほどコンパクトな設計となっていました。これにより、リアエンジンルーム上部をラゲッジスペースとして活用することが可能になり、リアエンジン車特有の荷室不足という弱点を見事に克服しました。フロントノーズのラゲッジスペースと併用することで、実用性はさらに向上しました。

サスペンションに関しても、ビートルではトーションリーフスプリングが採用されていたのに対し、タイプ3ではトーションバー・スプリングを採用。より洗練された乗り心地とハンドリングを実現しました。

バリエーションと生産終了

タイプ3には、2ドアノッチバックセダン、2ドアクーペ（カルマンギア1500）、2ドアワゴン（ヴァリアント）など様々なボディタイプが存在しました。北米市場では、ファストバックモデル（Fastback）が主に販売されました。しかし、1973年7月、フォルクスワーゲンの新世代モデルであるパサートが登場したことで、タイプ3の生産は終了しました。12年間で250万台以上の生産台数を記録しましたが、ビートルのような圧倒的な成功は収めることができませんでした。

派生車種：カルマンギア タイプ34

タイプ3をベースとした派生車種として、カルマンギア タイプ34が存在します。アメリカ車の影響を受けたシャープなスタイリングが特徴で、タイプ1 カルマンギアよりも高級志向のモデルでした。しかし、タイプ1 カルマンギアほどの高い人気を獲得することはできず、1969年に生産終了となりました。生産台数は4万2,505台と、タイプ3の他のモデルと比較して非常に少ないです。

ブラジルでの生産

ブラジルでは、1968年からタイプ3の現地生産が始まりました。本国とは異なる4ドアノッチバックモデルや、独自のスタイルを持つモデルが生産され、高い人気を博しました。中でも3ドアワゴンの「ヴァリアンチ」は、ブラジル市場において特に人気があったモデルです。

日本での人気

日本では、ヤナセを通じて輸入販売されました。生産終了後も中古車として人気があり、ビートルと同様に、愛好家によって大切に受け継がれています。

まとめ

フォルクスワーゲン・タイプ3は、優れた居住性とトランクスペースを備えた実用的な車でしたが、空冷エンジンや4ドアモデルの欠如といった戦略的な問題により、市場での成功は限定的でした。しかし、その個性的なデザインと高い実用性から、今日でも多くの愛好家から支持されています。

もう一度検索