フォルクスワーゲン・ボーラ

フォルクスワーゲン ボーラ：ゴルフとパサートの間に位置する上質なセダン

フォルクスワーゲン ボーラは、1998年にヴェントの後継車種として登場した、Cセグメントに分類される4ドアセダンです。ゴルフとパサートの中間に位置づけられ、ゴルフIVとプラットフォームを共有するなど、フォルクスワーゲンの技術とデザイン思想を凝縮したモデルと言えるでしょう。車名は、アドリア海沿岸などで吹く北風に由来しています。

エクステリア：エレガントなデザインと高い品質

先代ヴェントに比べ、全長はわずかに延長されたものの、全幅と全高は拡大され、日本市場では3ナンバーサイズとなりました。外板パネルの大部分は専用設計され、ゴルフとは異なる個性的なスタイルを確立しています。フロントは角型ヘッドライトにプロジェクタータイプを採用。特徴的なCピラーは、よりエレガントな印象を与えています。また、ボディパネルの継ぎ目も最小限に抑えられ、高い品質と精緻なつくりが評価されました。全グレードにアルミホイールが標準装備され、V6モデルにはクロームメッキが追加されるなど、上質な仕上がりとなっています。

インテリア：高級感と実用性を両立した室内空間

インテリアはゴルフIVをベースに、さらに高級感を増した設計となっています。本革巻きステアリングとシフトノブ、V型エンジン搭載車には本革シートが標準装備されました。ブラックとベージュの2種類の内装から選択可能で、インストルメントパネルやドアグリップにはウォールナットが使用され、シフトノブ周辺はメッキパーツがアクセントとして使われています。エアコンはフルオートエアコンとなり、折りたたみ式のカップホルダーも標準装備されました。カーオーディオは1DINサイズでしたが、2DINへの対応も可能で、社外品やメーカー純正のDVDナビゲーションシステムも装備できました。メーターパネルやスイッチ類の文字は、ヘッドライト点灯時に青く光るなど、独特の高級感を演出していました。

走りと性能：様々なエンジンバリエーションと高い走行性能

日本市場では、2.0L直列4気筒SOHCと2.3L狭角V型5気筒SOHCガソリンエンジンが導入され、トランスミッションは4速AT、駆動方式はFFでした。その後、2.8L V6モデルが追加され、このモデルはフルタイム4WDの「4モーション」システムと6速MTが採用されました。海外市場では、1.4L～2.8Lの様々なガソリンエンジンと1.9Lディーゼルエンジンが用意され、MT仕様も存在しました。

後部座席とトランクルーム：居住性と積載容量の課題

ボーラは内外装の高級感を高めることに成功した一方で、後部座席の居住性とトランクルーム容量は犠牲となりました。ホイールベースは延長されたものの、後席のレッグスペースとヘッドクリアランスは狭く、トランクルーム容量も先代ヴェントに比べ減少しています。そのため、ファミリーカーとしての使い勝手は若干限定的でした。

歴史と販売状況：日本での販売とグローバル展開

1999年10月に日本市場に導入されたボーラは、2006年2月に生産終了となりました。その後継車種は、北米と名称を統一した3代目ジェッタ（日本市場では2代目）となりました。しかし、カナダでは「シティジェッタ」として、中国ではマイナーチェンジを経て生産が継続されました。日本市場では、2.0Lと2.3Lモデルが中心となり、2003年には全グレードにカーテンエアバッグが標準装備となりました。

まとめ：ゴルフを超えた上質なセダン

ボーラは、ゴルフをベースにしながらも、高級感あふれる内外装と上質な走りを実現したモデルです。後部座席の居住性やトランクルーム容量に課題は残るものの、ゴルフベースのセダンという従来の枠を超え、フォルクスワーゲンの新たな可能性を示したと言えるでしょう。

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