フォークランド危機 (1770年)

フォークランド危機（1770年）

1770年に発生したフォークランド危機は、イギリスとスペインの間で大西洋南部のフォークランド諸島を巡る領有権の対立が引き起こした重要な外交事件です。この危機は、両国がそれぞれの主張を確認するために艦隊を派遣し、戦争の瀬戸際に立たされるなど、緊迫した状況を生み出しました。最終的には、フランスの支援が得られなかったスペインが譲歩する形で解決の道を探ることになります。

背景

フォークランド諸島の発見については、イギリスとスペインそれぞれの歴史家が自国の探検家の貢献を主張しています。イギリスの探検家であるジョン・ストロング船長は1690年に西フォークランド島と東フォークランド島の間を航行し、その後その海峡はフォークランド海峡と名付けられました。17世紀のイギリス政府はこの地域の領有権を一度は主張しましたが、本格的な関与は1748年から始まります。その後、イギリスはこの地域への遠征を計画しましたが、スペインの反発により一旦この計画は棚上げされました。

1763年に七年戦争が終結すると、フランスは南大西洋における影響力を強化しようとし、1764年にはルイ・アントワーヌ・ド・ブーガンヴィルがフォークランド諸島に上陸しました。その後、1765年にはイギリスのジョン・バイロンも西フォークランド島に到達しましたが、双方はお互いを認識することなく行動しています。1767年、フランスはスペインの要求に応じてポール・サン・ルイをスペインに引き渡し、これが両国の緊張関係の背景となります。

スペインによる占領

1770年6月、スペインはブエノスアイレスからフリゲート艦を派遣し、ポート・エグモントにおいてイギリスの軍隊に対して圧力をかけ始めました。イギリス軍の指揮官であるジョージ・ファーマーは、スペイン艦隊の到着を受けて抵抗の意志を示しましたが、彼の指揮下にある部隊は数に劣り、最終的には降伏を余儀なくされました。スペイン軍はイギリス軍の装備を押収し、ファーマーの部隊は帰国を許可されました。

この一連の出来事について、英国内では議員たちの間で激しい怒りが広がり、政府に対して行動を促す声が強まりました。イギリスは反撃のための動員を始めますが、これまでの戦争の経験からどのような対応を取るべきか、難しい選択に直面していました。

フランスとの関係

スペインはフランスとの戦争協定を発動し、フランス側からの支持を求めました。一時はフランスの大臣が戦争を支持する姿勢を見せるものの、最終的にはルイ15世がそれに反対し、スペインは孤立した立場に追い込まれました。この状況を受けて、スペインはイギリスとの妥協を模索することになりました。

スペインの譲歩

1771年1月、スペインはポート・エグモントを回復する意向を示す宣言を発表しました。この宣言では、「ブカレリの暴力行為を認識せず、全てを元の状態に戻す」と約束されました。スペインはこの時点での領有権問題に関して明確な譲歩を示し、グレートブリテン国王に対して賠償を認めました。

イギリスはポート・エグモントの基地を回復しましたが、この時点で領有権の問題は解決されたわけではなく、今後もこの問題は度々表面化することになります。サミュエル・ジョンソンはこの事件を通じて、フォークランド諸島の維持の難しさや、その戦略的意義についての考察を残しました。

影響

この危機はイギリスにとって重要な外交上の成功となり、首相ノース卿の評価を高める要因となりましたが、同時にアメリカ独立戦争におけるフランスの介入に対する誤った認識を生むことにも繋がりました。一方、フランスではショワズール公の影響力が低下し、新たにヴェルジャンヌ伯爵が名を馳せることになります。これはフランスが最終的にアメリカ独立戦争に介入する決定に至る背景となりました。

フォークランド危機は、国家間の領有権を巡る緊張と、それに伴う外交戦争の危機を浮き彫りにする重要な出来事でした。

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