フォーゲル (小惑星)

小惑星 (11762) フォーゲル

概要

小惑星 (11762) フォーゲル（Vogel）は、太陽系の主要な小惑星が集まる領域である小惑星帯に位置する天体の一つです。その名称は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて天文学の発展に大きく貢献したドイツの傑出した天文学者、ヘルマン・カール・フォーゲル氏（Hermann Carl Vogel, 1841-1907）の功績を称え、国際天文学連合（IAU）によって正式に命名されました。

発見の経緯

この小惑星は、アメリカ合衆国カリフォルニア州に所在するパロマー天文台において、天文学者トム・ゲーレルス（Tom Gehrels）氏によって実施された広範な掃天観測プログラムの一環として発見されました。ゲーレルス氏は、当時としては画期的なシュミット式望遠鏡を用いた写真観測によって、多数の小惑星や彗星を発見しています。

ゲーレルス氏が撮影した写真乾板は、オランダのライデン天文台に送られ、そこで詳細な分析が行われました。この分析を担当したのは、イングリッド・ファン・ハウテン＝グローネフェルト（Ingrid van Houten-Groeneveld）氏と、その夫であるコルネーリス・ヨハネス・ファン・ハウテン（Cornelis Johannes van Houten）氏の夫妻です。彼らは膨大な量の写真データから天体の微小な動きを丹念に調べ上げ、新たな小惑星を発見する作業に従事していました。(11762) フォーゲルは、このようにパロマー天文台での観測データとライデン天文台での分析作業という、国際的な協力体制のもとで発見された天体の一つと言えます。

命名の由来

小惑星 (11762) に「フォーゲル」という名称が与えられたのは、前述の通りドイツの天文学者ヘルマン・カール・フォーゲル氏に敬意を表してのことです。フォーゲル氏は、恒星のスペクトル分析や視線速度の測定といった分野でパイオニア的な研究を行い、連星系の研究や恒星の物理的性質の解明に貢献しました。特に、ドップラー効果を利用した恒星の視線速度測定法の確立は、天体物理学の発展において重要なマイルストーンとなりました。

小惑星の命名は、発見者が提案し、国際天文学連合の小天体命名委員会によって承認されるという手順を経て行われます。科学史上の偉人や神話上の人物、地名など、様々な命名規則がありますが、功績のあった科学者の名前を冠することは、その人物への敬意を示すとともに、後世にその名を伝える意義も持っています。

軌道と分類

(11762) フォーゲルは、太陽からおよそ2天文単位から3.5天文単位の範囲に広がる小惑星帯に位置しています。小惑星帯は、太陽系が形成された初期に惑星になりきれなかった微惑星の残骸が集まった領域と考えられており、多様な大きさや組成を持つ無数の小惑星が存在します。

小惑星の軌道は、その後の正確な位置や将来の動きを予測するために極めて重要です。軌道要素は、軌道の形状（離心率）、サイズ（軌道長半径）、傾き（軌道傾斜角）といったパラメータによって定義されます。(11762) フォーゲルの軌道要素も計算され、公開されており、これらのデータを通じて、他の天体との重力的な相互作用や、分類上の位置づけなどが研究されています。

関連情報

(11762) フォーゲルのように、多数発見されている小惑星には番号が割り当てられています。(11001) から (12000) までの小惑星の一覧には、同時期に発見され、同様に命名や軌道決定が行われた他の多くの天体の情報が含まれており、これらをまとめて参照することで、小惑星帯の多様性や発見の歴史の一端を理解することができます。

小惑星に関する研究は、太陽系の起源や進化を探る上で重要な鍵となると同時に、将来的な資源探査や地球への衝突リスク評価といった実用的な側面も持っています。 (11762) フォーゲルのような個々の小惑星に関する情報は、こうした広範な天文学的探求の一部を構成しています。

（文末に、関連する軌道要素データへの外部リンクなどが参照されることがあります。）

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