フォーチュン座

フォーチュン座：エリザベス朝演劇の中心地

フォーチュン座は、17世紀初頭のロンドンで隆盛を極めた、エリザベス朝演劇の代表的な劇場の一つでした。ロンドンのシティの外れ、ホワイトクロス通りとゴールデン通りの間に位置し、1600年の設立から1642年の清教徒革命による閉鎖まで、多くの観客を魅了しました。グローブ座、スワン座といった同時代の劇場と並び、ロンドン演劇史において重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

建立と初期の成功

フォーチュン座の建設は、ロンドンの劇場事情における大きな転換期に起こりました。1590年代後半、有力劇団であったチェンバレン卿一座がグローブ座を建設したことで、劇場間の競争は激化しました。この状況下で、海軍大臣一座のマネージャー、フィリップ・ヘンズロウと、一座の主演俳優エドワード・アレンは、ショーディッチに新たな劇場を建設しようと計画します。アレンの資金提供により、彼らは土地を借り受け、グローブ座建設にも携わったピーター・ストリートを建築監督として迎え入れました。アレンが保管していた建築契約書は、フォーチュン座の建築に関する詳細な情報を残しており、グローブ座と比較して、同等かそれ以上の規模であったことが示唆されています。

近隣住民やロンドン市当局からの反対もあったものの、有力者の支援を得て、フォーチュン座は無事完成。1600年後半には海軍大臣一座が常駐し、20年以上にわたって公演を続けました。当初は「街で最上の劇場」と謳われ、高い人気を博しました。しかし、時が経つにつれて、評判は徐々に低下していきます。酒乱やスリが舞台に乱入する事件や、観客間の喧嘩などが発生し、治安の悪さも指摘されるようになりました。17世紀前半には、質の高い演劇を提供する劇場というよりは、騒々しく、古臭い演目を上演する劇場というイメージが定着していったようです。

火災と再建、そして閉鎖へ

1621年には火災により全焼するという大きな損害を受けました。しかし、エドワード・アレンは再建費用を募り、1623年にはレンガ造りの新しい劇場として再オープンしました。再建されたフォーチュン座は、防火対策も強化されましたが、評判の改善には繋がりませんでした。船員による暴動や、観客による襲撃事件などが発生し、劇場の治安は悪化したままでした。1631年には海軍大臣一座が別の劇場に移り、その後はキングズ・レヴェルズ一座、そしてレッド・ブル座の劇団が使用しました。ペストの流行による閉鎖なども経て、劇場は徐々に衰退していきます。

1642年、長期議会による劇場閉鎖令によって、フォーチュン座は完全に閉鎖されました。閉鎖令後も密かに公演が行われた時期もあったようですが、イングランド内戦の兵士たちが劇場の設備を破壊したことで、フォーチュン座は完全にその役目を終えました。残った建物は解体され、その歴史に幕を閉じました。

フォーチュン座のデザインと復元

フォーチュン座は、ほぼ正方形の敷地に、3階建ての建物が建てられました。当時の円形劇場とは異なる正方形の形状が特徴で、グローブ座よりも広い規模を誇っていたと伝えられています。ステージ、楽屋、客席など、建築の詳細はアレンが残した建築契約書によってある程度明らかになっていますが、図面などは残っていないため、完全な復元は困難です。

それでも、フォーチュン座を現代に復元しようとする試みは続けられています。早稲田大学坪内博士記念演劇博物館、アレン・エリザベス朝劇場、新フォーチュン座、グダニスク・シェイクスピア劇場など、世界各地でフォーチュン座をモデルとした劇場が建設されており、その歴史と魅力を現代に伝えています。これらの復元プロジェクトは、当時の劇場の様子を想像し、エリザベス朝演劇をより深く理解する上で重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

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