フォートヘア大学

フォートヘア大学：アフリカの独立と人権を担った人材育成の拠点

南アフリカ共和国東ケープ州アリスにあるフォートヘア大学は、1916年の創立以来、アフリカの歴史に深く刻まれた公立大学です。当初は主に黒人学生を対象とした高等教育機関として設立され、アパルトヘイト時代においてもその使命を貫き、数多くの著名な卒業生を輩出することで知られています。

黒人高等教育の揺籃の地

19世紀、イギリスとコーサ族の戦争における砦「フォート・ヘア」の跡地に、1830年代にはラブデール宣教師研究所が設立されました。1878年、宣教師ジェームズ・スチュワートは黒人学生のための高等教育機関設立を提唱しますが、実現したのは1916年、初代校長アレクサンダー・カーのもとフォートヘア大学が創立された時でした。

設立当初は南アフリカ大学、のちローズ大学の付属校でしたが、アパルトヘイト政策導入後も、黒人学生への教育を継続しました。学費は低額に抑えられ、奨学金制度も充実していたため、貧しい学生も教育を受けることが可能でした。D.D.T Jabavuは、ラテン語と黒人言語の両方で講義を行う、最初の黒人教員でした。

1959年にアパルトヘイト体制に組み込まれ、改組を余儀なくされますが、黒人専用大学となった後も、政府の厳しい管理下に置かれながらも教育を継続。1919年から1959年にかけては、サハラ以南アフリカにおける屈指の黒人高等教育機関として、西洋式の学術教育を提供し、多くの黒人エリートを育成しました。

アパルトヘイトへの抵抗とアフリカの独立運動

フォートヘア大学は、アパルトヘイト体制への抵抗運動の中心的存在でもありました。多くの卒業生が、アフリカ民族会議（ANC）や他の反アパルトヘイト運動組織において重要な役割を果たしました。ネルソン・マンデラ、オリバー・タンボ、ゴバン・ムベキといったANCの指導者、デズモンド・ツツ、ロバート・ソブクウェなどの反アパルトヘイト運動の著名な活動家もフォートヘア大学の卒業生です。マンデラは大学在学中に当局と対立し退学を余儀なくされましたが、のちにフォートヘア大学を高く評価する言葉を記しています。

さらに、フォートヘア大学の卒業生は、アフリカ各国の独立運動と新政府樹立においても指導的な役割を果たしました。ケニアのジュリアス・ニエレレ、ボツワナのセレツェ・カーマ、ジンバブエのロバート・ムガベなど、多くの卒業生が国家元首となりました。

アパルトヘイト後と現在

アパルトヘイト終結後、フォートヘア大学は南アフリカの公立高等教育システムに組み込まれました。1991年にはオリバー・タンボが学長に就任。その後、副学長デリック・スワーツによる大学改革が推進され、財政基盤と学術水準の向上を目指した「UFH Strategic Plan 2000」が開始されました。学部再編などの改革を経て、現在も5学部（教育、法律、経営・商業、科学・農業、社会科学・人文科学）を擁し、博士課程まで学ぶことが可能です。

現在、アリスのメインキャンパスに加え、ビショ、イーストロンドンにもキャンパスがあり、多くの学生が学んでいます。フォートヘア大学は、アパルトヘイト時代の苦難を乗り越え、現在もアフリカの未来を担う人材育成に貢献し続けているのです。

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