フォード・カプリ

フォード・カプリ：ヨーロッパを代表する名クーペの歴史

フォード・カプリは、フォード社が生産したクーペ型乗用車で、その歴史は長く、多岐にわたります。イギリス、ヨーロッパ、そしてオーストラリアと、異なる地域で製造された3つのモデルが存在し、それぞれ独自の個性と魅力を持っています。

コンサル・カプリ：カプリの始まり

カプリの歴史は、1961年から1964年にかけてイギリスで生産された「コンサル・カプリ」に遡ります。フォード・コンサル・クラシック315をベースとしたこのモデルは、商業的には成功をおさめませんでしたが、後のカプリシリーズの礎を築いた重要な存在と言えます。

ヨーロッパ・フォード製カプリ：マスタングの再来

1969年1月、アメリカで絶大な人気を誇ったフォード・マスタングの成功をヨーロッパで再現しようと、フォードはカプリ・クーペを発表しました。ロングノーズ・ショートデッキという、スポーティなプロポーションと、リアフェンダーのプレスラインやU型のクオーターウインドーが特徴的なデザインは、たちまち人気を博しました。このデザインは、1986年の最終モデルまで受け継がれています。

Mk1：スポーツカーとしての成功

初代カプリ（Mk1）は、フォードの既存車種からの部品を多く流用しながらも、多様なエンジンバリエーションと内外装トリムレベルを用意することで、幅広い顧客層を獲得しました。ドイツ製V4エンジンやイギリス製直列4気筒エンジンに加え、上級モデルにはV6エンジンも搭載されました。モータースポーツにも積極的に参戦し、スパ・フランコルシャン24時間耐久レース優勝や、BMW 3.0 CSLとの激しいバトルを繰り広げるなど、その高いポテンシャルを証明しました。レース仕様車のホモロゲーション取得のために、高性能モデルであるRS2600やRS3100も生産されました。日本にも多く輸入され、スポーティーカーのデザインに大きな影響を与えました。

カプリII：進化と日本市場での挑戦

1974年2月、カプリはモデルチェンジを行い、「カプリII」として登場しました。搭乗室と荷室が一体となった3ドアハッチバックとなり、ボディサイズも拡大されました。エンジンは英独共通化され、エスコートと同じエンジンが採用されました。日本でも販売されましたが、日本車メーカーのスポーティーカーの台頭もあり、初代ほどの成功は収めませんでした。

Mk3：高性能モデルの登場

1978年、マイナーチェンジを経て「カプリ」の名称に戻ったMk3は、丸型4灯式ヘッドライトと大きなエアダムスカートが特徴でした。最高出力190馬力の2.8リッターV6ターボモデルも追加され、最高速度は220km/hに達しました。

1984年11月以降はイギリスでのみ生産され、「Capri 280 Brooklands」などの限定モデルが発売されました。1986年12月19日、最後のカプリが生産ラインから降り、その歴史に幕を閉じました。累計生産台数は188万6,647台にのぼりました。

フォード・オーストラリア製カプリ：コンバーチブルモデル

1989年、フォード・オーストラリアは、マツダ・ファミリアをベースとしたカプリ・コンバーチブルを発表しました。エクステリアデザインはギア、インテリアデザインはイタルデザインが担当し、アメリカではマーキュリー・カプリとして販売されました。

まとめ

フォード・カプリは、そのスタイリッシュなデザイン、優れた走行性能、そしてモータースポーツでの活躍を通じて、世界中の多くのファンを魅了しました。時代とともに進化を遂げながらも、一貫してスポーティな魅力を放ち続けたカプリは、まさにヨーロッパを代表する名車と言えるでしょう。

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