フォーランド ナット

フォーランド・ナット (Folland Gnat)

フォーランド・ナットは、イギリスのフォーランド・エアクラフト社が開発した戦闘機および練習機であり、1955年に初飛行を果たしました。この機体は、戦闘機の高性能化が進む中で、敢えて小型かつ軽量な設計を選び、経済的かつ扱いやすい特性を重視して開発されました。

開発の経緯

ナットの開発は1952年から始まり、1954年8月には先行機体であるミッジが初飛行しました。その後、1955年に正式な機体としてナットが完成し、初飛行が実施されました。従来の戦闘機が大型化し、複雑さとコストが増加する中、ナットは生産にかかる労力を1/5、価格を1/3に抑えることを狙っていました。この方針に従い、機体はオーソドックスな後退翼機で、エンジンを1基搭載し、パイロット1名が搭乗する小型機として設計されました。

主翼は高翼配置であり、エアインテークは機体の側面に配置され、ノズルは機体の後部に位置しています。機体のコンパクトなサイズは、日本の零戦と類似しており、軽量化を追求した結果、当時のモダンなジェット機の中では比較的低出力なエンジンを搭載していたにもかかわらず、高速性を発揮できました。しかし、水平飛行時には音速を超えることができませんでした。

戦闘機から練習機へ

ナットは優れた運動性能を持っていましたが、そのコンパクトさが逆に武装の搭載量や航続距離に制約をもたらしました。このため、イギリス空軍では8機の試作が発注されたものの、実戦部隊用としては正式に採用されることはありませんでした。加えて、デ・ハビランド ベノムの後継としてのテストにも参加しましたが、より大型で武装が充実したホーカー ハンターに敗北しました。

しかし、ナットは1957年に練習機型としてFo.114（後にナット T.Mk1と改称）としてイギリス空軍に採用されました。この練習機型は、胴体が0.64m延長され、タンデム型の二人乗り構造に変更されました。主翼も改良され、運動性が向上し、スリッパ型の形状の増加燃料タンクも装備されました。訓練用に優れた特性を持ちましたが、コクピットの居住性が悪く、大柄なパイロットは他の機体で訓練を受けることもあったようです。

海外への輸出

イギリス空軍での実戦運用には至らなかったナットですが、その後フィンランド、ユーゴスラビア、インドなどに輸出されました。フィンランドには13機が1958年から1959年にかけて提供され、その後1974年まで運用されました。ユーゴスラビアも評価用に2機を購入しましたが、その後の導入は行われなかったと言われています。

一方、ナットはインド空軍において非常に有効に活用されました。初飛行翌年の1956年には23機の輸入契約を締結し、さらにライセンス生産の契約も行いました。インド空軍では1959年11月より順次引き渡しが行われ、1960年から正式に部隊配備されました。ナットは第二次・第三次印パ戦争で使用され、優れた上昇性能と機動力を活かしてパキスタン空軍のF-86 セイバーを撃墜する等の成果を残しました。

特徴と要目

ナットは運動性の高さからパイロットの訓練にも適しており、その技術は後の戦闘機運用へと引き継がれました。ライセンス生産はインドのヒンドスタン航空機で行われ、合計175機が生産されました。さらに、ナットを改良した型として「アジート」が開発され、1990年代まで生産が続けられました。

ナットの基本要目は以下の通りです。

• - 乗員: 1名
• - 翼幅: 6.73 m
• - 空虚重量: 2,175 kg
• - 最大離陸重量: 4,100 kg
• - 動力: ブリストル・シドレー オーフュース701-01 ターボジェット（出力: 20.9 kN）
• - 最大速度: 1,120 km/h（高度20,000フィート時）
• - 航続距離: 800 km
• - 武装: ADEN 30mm×2門、3インチロケット弾×18発、500ポンド爆弾×2発

ナットの設計理念は、戦闘機の新たな方向性を示唆するものであり、現在でも多くの航空機設計者に影響を与えています。

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