フコース:生命現象を支えるデオキシ糖
フコースは、6-デオキシ-
ガラクトースという構造を持つデオキシ
糖の一種です。
化学式はC6H12O5、分子量は164.16、融点は163℃、比旋光度は-76°です。六炭
糖の一種であり、単
糖に分類されます。6-デオキシヘキソースと呼ばれることもあります。
自然界では、L-フコシドの形で、動植物に広く分布しています。その名称は、フコイダンと呼ばれる、ヒバマタなどの
褐藻類の
細胞壁多
糖類から発見されたことに由来しています。フコイダンは昆布のねばねば成分としても知られています。
フコースの生物学的役割
ヒトにおける役割:
ヒトでは、ABO血液型のH
抗原として重要な役割を果たします。O型血液は基本となる3
糖にフコースのみが付加された構造を持ち、A型はさらにN-アセチルガラクトサミンが、B型は
ガラクトースが付加された構造となります。A、B、H遺伝子は、これらの
糖を付加する
酵素をコードしています。フコースが存在しないボンベイ型では、AやB遺伝子を持っていてもO型血液となります。
さらに、α1→3結合のコアフコースは、IgEを介したアレルギー反応に関与する
[糖]]鎖抗原であると考えられています。この
抗原は、フコース(Fuc)、オリゴマンノース(Man)、[[ガラクトース]からなるMan-Fuc-Galという配列で多く存在します。
植物における役割:
陸上植物では、
ペクチンやキシロ
グルカンといった
細胞壁多
糖類に含まれています。大根などの細胞外マトリックスのプロテオグリカンにもフコースが含まれ、ヒトのO型血液と同様の免疫反応を示すことが知られています。
海藻における役割:
海藻では、
褐藻類に多く含まれるフコイダンにフコースが含まれます。フコイダンは、粘性を持つ多
糖類であり、様々な生理活性を持つことが知られています。
フコースの生合成
生体内では、GDP-フコースという
糖ヌクレオチドから、フコース転移
酵素によって合成されます。ヒトでは、H
抗原の合成以外にも複数のフコース転移
酵素が確認されており、植物では、キシロ
グルカンのフコース転移
酵素が最初にクローニングされ、
セルロース以外の植物
細胞壁多
糖類合成
酵素としては最初のクローニング例となりました。
GDP-フコースは、GDP-マンノースから、4,6位脱水素反応、C3位エピマー化、O-4位還元反応を経て合成されます。
まとめ
フコースは、血液型、アレルギー反応、植物の
細胞壁構造など、多様な生物学的機能を持つ重要な
糖鎖成分です。その生合成経路や機能解明は、生命科学研究において重要な課題であり、医療や食品分野への応用も期待されています。今後の研究により、フコースの新たな機能や応用が明らかになることが期待されます。