フスト・ルフィーノ・バリオス

フスト・ルフィーノ・バリオス：グアテマラの「改革者」

フスト・ルフィーノ・バリオス（1835年7月19日 - 1885年4月2日）は、19世紀後半のグアテマラにおいて、長期にわたり大統領を務めた政治家、軍人です。彼の在任期間（1873年-1885年）は、自由主義的な経済・社会政策によって特徴づけられ、グアテマラの近代化に大きく貢献しました。しかし、中央アメリカ連邦共和国の武力による再統合の試みは、彼の死によって頓挫しました。

生涯と政治的背景

バリオスは、サン・マルコス県のサン・ロレンソで生まれました。当時のグアテマラは、独立初期の混乱期にあり、自由主義者と保守派の対立が激化していました。保守派はカトリック教会の権威を維持しようとし、自由主義派は世俗的な権力による平等な社会を追求しました。

1871年、ミゲル・ガルシア・グラナドスの率いる自由主義者が、保守派のビセンテ・セルナ大統領に対して反乱を起こすと、バリオスもこの動きを支援しました。同年6月30日、反乱軍は首都グアテマラシティを制圧し、セルナ大統領はホンジュラスへ亡命しました。

ガルシア・グラナドスが臨時大統領に就任すると、バリオスは軍務大臣に任命されました。しかし、ガルシア・グラナドスが自由主義改革に消極的であったため、バリオスは武力で圧力をかけ、選挙を実施させました。

大統領としての改革

1873年6月4日、バリオスはガルシア・グラナドスの後を継いでグアテマラ大統領に選出されました。「改革者」(el Reformador)として知られるバリオスは、自由主義的な経済・社会改革を積極的に推進し、特に海外貿易の促進に力を入れました。1877年以降の法改正を通じて、土地所有者が低賃金の労働者を雇用しやすいように制度を改革しました。

また、バリオスの時代には、インフラストラクチャーへの投資が活発化し、港湾、グアテマラ初の鉄道、都市交通などが整備されました。コーヒーがグアテマラの主要な経済作物となったのも、この時期のことです。しかし、20世紀初頭には、グアテマラのコーヒー農園はドイツ人によって独占されるようになりました。

バリオスは政教分離を推し進め、十分の一税を廃止し、カトリック教会の権力を弱体化させました。教会の資産を没収して国有化し、修道士を一般市民としました。教育、結婚、墓地、相続などを世俗化し、小学校を無償の義務教育とする一方で、大学での神学教育を禁止しました。

独裁と中央アメリカ連邦再建の試み

バリオスはグアテマラ初のカウディーリョ（カリスマ的指導者）であり、彼の後、1944年のグアテマラ革命まで、大統領は武力を背景に強権を振るうようになりました。彼はヨーロッパ中心主義者であり、先住民の文化や農村を抑圧しました。

1879年に自由主義憲法が公布され、バリオスの独裁が正当化されました。同年、大統領に再選されたバリオスは、中央アメリカ諸国を再統合して連邦を建設しようとしましたが、他国からの賛同を得られず、特にエルサルバドルはグアテマラに敵対的でした。メキシコとの間でも領土紛争が発生し、1882年にチアパス州とソコヌスコの国境線を現状維持することで合意しましたが、これはメキシコに有利な内容でした。

1883年、バリオスはホンジュラスを武力で脅し、当時の大統領マルコ・アウレリオ・ソトを亡命させました。1884年には、中央アメリカ連邦再建のための会議を開きましたが、ニカラグアとコスタリカの政府がこれを拒否したため、武力によって強制的に従わせようとしました。

1885年、エルサルバドルのチャルチュアパを攻撃中に戦死しました。エルサルバドル軍に射たれて命を落としたとも伝えられています。

遺産

イサバル県の県都プエルト・バリオスの名前は、バリオスに由来します。また、5ケツァル紙幣には、彼の肖像が描かれています。

フスト・ルフィーノ・バリオスは、グアテマラの近代化に大きく貢献した一方で、独裁的な統治や中央アメリカ連邦再建の強引な試みなど、賛否両論のある人物です。しかし、彼の改革はグアテマラの歴史に大きな影響を与え、現代のグアテマラ社会の基礎を築いたと言えるでしょう。

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