フトダマ

フトダマ：日本神話の重要な神々の一柱

フトダマは、日本神話において重要な役割を担う神です。『古事記』では布刀玉命、『日本書紀』では太玉命と記され、『古語拾遺』には天太玉命という別名も確認できます。忌部氏（後に斎部氏と改称）の祖神の一柱とされており、その系譜や役割は様々な文献で異なった記述が見られます。

神話におけるフトダマの活躍

フトダマの出自については、『古事記』や『日本書紀』には明確に記されていません。しかし、『古語拾遺』などによると、高皇産霊尊の子であるとされています。

最も有名な活躍は、天照大神の岩戸隠れにおける出来事です。天照大神が岩戸に隠れた際、思兼神が考案した天照大神を誘い出す策の実行において、フトダマは重要な役割を果たしました。天児屋命とともに、太占（ふとまに）を行い、その策が有効であるかどうかを占っています。

具体的には、八尺瓊勾玉や八咫鏡などを装飾した天の香山の五百箇真賢木を捧げ持ち、岩戸から天照大神が顔をのぞかせた際に、アメノコヤネとともに鏡を差し出したとされています。この場面は、天照大神を誘い出す重要な儀式の一部として描かれています。

また、天孫降臨の際にも、瓊瓊杵尊に従って地上に降り、五伴緒の一人として随伴したと伝えられています。さらに、『日本書紀』の一書には、アメノコヤネと共に天照大神を祀る伊勢神宮の守護神となるよう命じられたという記述も見られます。

文献による役割の違い

岩戸隠れにおけるフトダマの役割については、『古事記』や『日本書紀』では天児屋命の方がより重要な役割を担っているように描写されています。一方、『古語拾遺』では、斎部氏の祖である斎部広成によって記されており、フトダマの方が中心的な役割を果たしているという記述が見られます。このように、文献によってフトダマの役割や重要性が異なって描写されている点が興味深いところです。これは、それぞれの文献の編纂年代や目的、著者の立場などが影響していると考えられます。

フトダマを祀る主な神社

フトダマは、全国各地の神社で祀られています。主な神社としては、以下のものがあげられます。

天太玉命神社（奈良県橿原市）
大麻比古神社（徳島県鳴門市）
安房神社（千葉県館山市）
大原神社（千葉県君津市）
洲崎大神（神奈川県横浜市）
安房口神社（神奈川県横須賀市）
金札宮（京都府京都市）
諸羽神社（京都府京都市）

これらの神社では、フトダマを主祭神として祀り、様々な祭事が行われています。

まとめ

フトダマは、日本神話における重要な神であり、岩戸隠れや天孫降臨といった重要な場面で活躍しました。その役割や重要性については、文献によって異なる記述が見られますが、忌部氏（斎部氏）の祖神として、古くから人々に信仰されてきたことが伺えます。各地の神社で祀られていることからも、その信仰の広がりと深さがうかがえます。今後の研究によって、フトダマに関する更なる知見が得られることが期待されます。

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