フネリック

フネリック：ヴァンダル王国の揺らぎと終焉

フネリック (Huneric, Hunneric, Honeric, 484年没) は、北アフリカのヴァンダル王国を477年から484年まで支配した王です。父にしてヴァンダル王国を強大なものにしたガイセリックの長男として、彼は王位継承者としての道を歩みましたが、その治世は父とは対照的なものとなりました。

人質時代と王位継承

フネリックは、435年、父ガイセリックが西ローマ帝国との条約締結の際に人質としてイタリアへ送られました。この経験が、彼の外交政策に影響を与えた可能性があります。477年、父ガイセリックの死後、フネリックは王位を継承します。彼の妻は、西ローマ皇帝ヴァレンティニアヌス3世の娘エウドキアであり、息子のヒルデリックも生まれました。ヴァンダル王として初めて「ヴァンダル人とアラン人の王」という正式称号を用いたことも特筆されます。しかし、地中海の覇権を握った父ガイセリックの威信には遠く及ばないものでした。

宗教政策の転換と弾圧

フネリックは熱心なアリウス派信徒でした。しかし、彼の治世初期は、ローマ人領民への譲歩も見られました。東ローマ帝国からの使節団の来訪時には、父が没収したカルタゴ商人の財産を返還し、ニカイア派（カトリック）への迫害も緩和しました。ニカイア派のカルタゴ司教座を24年間空位であった状態から、エウゲニウスを任命するのを許容したのです。

しかし、この寛容な姿勢は長くは続きませんでした。フネリックは後に方針を転換し、カトリックへの弾圧を再開します。カトリック教徒の財産没収を試みましたが、東ローマ帝国の強い抗議を受けて失敗すると、多数のカトリック教徒を辺境へ追放しました。484年には、カトリックとアリウス派の司教たちの会談を開催しましたが、その直後にカトリック司教たちを廃位し、コルシカ島へ追放するなど、弾圧はさらに激化していきました。

アリウス派への改宗を拒否した者は容赦なく処罰されました。前プロコンスルのウィクトリアヌスや裕福な商人たちは何人も殺害され、タプスの司教ウィギリウスは追放、後にアリウス派を批判する論文を著しました。フネリックの弾圧はカトリック教徒だけでなく、ハスディンギ王族やマニ教徒にも及んだとされています。

王国の衰退と最期

フネリックの治世後期には、オーレス山地（現在のアルジェリア）のムーア人が反乱を起こし、ヴァンダル王国から独立しました。これは、フネリックの統治の弱体化を示す出来事です。484年12月23日、フネリックは死去しました。彼の死後、王位は甥のグンタムンドが継承しました。歴史家ウィクトル・ウィテンシスの記録によれば、フネリックの遺体は腐敗し、大量の蛆虫が湧いていたとされています。ただし、この記述の信憑性については議論の余地があります。

まとめ

フネリックの治世は、父ガイセリックの強権的な統治とは対照的に、宗教的弾圧と王国の衰退という暗い影を落とした時代でした。彼の外交努力は限定的な成功にとどまり、宗教政策の揺らぎは王国の内部を不安定化させました。フネリックの死は、ヴァンダル王国の終焉への道を早めたと言えるでしょう。彼の治世は、強大な帝国の維持の困難さと、宗教的対立が社会にもたらす混乱を改めて示す歴史的教訓となっています。

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