フラウィウス・アンテミウス

フラウィウス・アンテミウス：東ローマ帝国の政治家

フラウィウス・アンテミウス（羅: Flavius Anthemius）は、5世紀初頭に活躍した東ローマ帝国の政治家であり、アルカディウス帝の時代からオリエンス道長官を務めました。その後、テオドシウス2世の幼少期には事実上の摂政として国政を掌握し、帝国の安定に大きく貢献しました。

生涯

アンテミウスは、344年から356年にかけてオリエンス道長官を務めたフラウィウス・ピリップスの孫にあたります。政治家としてのキャリアは、400年ごろに国庫管理総監に任じられたことから始まり、その後404年には内務長官に昇進しました。内務長官への就任は、コンスタンティノープル大主教イオアンの追放騒動と深く関わっています。イオアンを支持する民衆を鎮圧するために部隊の出動を求められた際、当初は拒否したものの、最終的には軍を動かし、事態の収束に重要な役割を果たしました。

405年には、アンテミウスは東ローマ帝国の執政官に任命されました。同年、西ローマ帝国の執政官はスティリコでした。皇后アエリア・エウドクシアの死後、アンテミウスはオリエンス道長官の職を引き継ぎ、東ローマ帝国において皇帝に次ぐ権力を持つことになりました。406年4月28日には、パトリキ（貴族）の称号を得ています。アルカディウス帝に代わり、帝国の政務を主導し、先代からの対ゲルマン人政策を継承し、東ローマ帝国の権威を維持しようと努めました。しかし、イリュリクムを併合して東ローマ帝国を従属させようとする西ローマ帝国のスティリコとの対立が深刻化し、西ゴート族のアラリック1世やイサウリア人への対応にも苦慮しました。また、ユダヤ教徒、キリスト教異端者、異教徒に対する法を制定しています。

408年にアルカディウス帝が崩御すると、後を継いだテオドシウス2世はわずか7歳でした。そのため、アンテミウスが摂政として政治を主導し、その才能を発揮しました。サーサーン朝との和平交渉を成立させて東方の安定を図り、スティリコの暗殺後には西ローマ帝国との関係を改善しました。409年にはフン族のウルディンを撃退し、ドナウ川の艦隊を増強してモエシアと小スキタイの防衛を強化しました。

コンスタンティノープルでは、エジプトなどの穀倉地帯からの穀物輸送が滞り、しばしば飢餓が発生していました。408年に飢餓が発生したことを受け、アンテミウスは穀物輸送商人への税を免除し、帝国内のあらゆる場所から穀物を調達できる輸送ネットワークを整備し、首都長官の管轄としました。また、緊急時には市民に開放するための食糧備蓄を整備しました。さらに、409年には税制を改革し、414年には368年から407年までの滞納税を免除しました。

コンスタンティノープルは5世紀初頭から拡大を続け、コンスタンティヌス1世時代の城壁を超えるまでになっていました。そこでアンテミウスは、旧城壁の1.5キロメートル西に、マルマラ海から金角湾に至る全長6.5キロメートルの新たな城壁を建設しました。413年にこの城壁が完成し、コンスタンティノープルの市域はほぼ2倍に拡大しました。歴史家のジョン・バグネル・ベリーは、アンテミウスを「第二のコンスタンティノープル建設者」と評しています。この城壁は後に増築され、「テオドシウスの城壁」として知られるようになり、現在もその一部が残っています。

414年、アンテミウスは突然歴史の表舞台から姿を消しました。摂政の地位はテオドシウス2世の姉であるアエリア・プルケリアに、オリエンス道長官の職はフラウィウス・モナクシウスに引き継がれました。

末裔

アンテミウスの娘は軍務長官プロコピウスと結婚し、後の西ローマ皇帝プロコピウス・アンテミウスを産みました。また、息子のアンテミウス・イシドルスは436年に執政官となっています。西ローマ皇帝アンテミウスの娘アリュピアは、西ローマ帝国のリキメルと結婚しました。アリュピアの末裔には、カロリング朝フランク王国のカール大帝がいます。

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