フラッシュポイント (アルバム)

1991年発表のローリング・ストーンズのライブアルバム『フラッシュポイント』(Flashpoint)は、バンドのエネルギーと進化が凝縮された作品として知られています。1989年から1990年にかけて行われた大規模ツアー「スティール・ホイールズ／アーバン・ジャングルワールドツアー」の音源を中心に構成されており、バンドの黄金期を彷彿とさせる演奏の数々が収録されています。

このアルバムの大きな特徴は、そのアップテンポでパワフルな演奏です。特にオープニングを飾る「スタート・ミー・アップ」から、聴く者を圧倒するようなエネルギーが感じられます。当時の最新技術を駆使したサウンドプロダクションも相まって、ストーンズのこれまでのライブアルバムとは一線を画す、鮮烈な印象を与えています。

さらに、『フラッシュポイント』には、ツアー中に行われた日本公演のライブ音源も収録されています。ミック・ジャガーによる日本語でのMCも収録されており、日本独自の雰囲気を楽しむことができます。「ロック・アンド・ア・ハード・プレイス」の終盤や「悪魔を憐れむ歌」の終了後などに挿入されている短いMCは、当時の興奮が伝わってくる貴重な記録と言えるでしょう。

また、このアルバムにはスタジオ録音の新曲2曲、「ハイワイアー」と「セックス・ドライヴ」が収録されていることも特筆すべき点です。「ハイワイアー」は湾岸戦争への皮肉を込めた曲として話題を呼びましたが、シングルリリース時には戦争は終結していました。「セックス・ドライヴ」はシングル・バージョンがリマスター盤に収録されるなど、アルバムの歴史においても重要な位置を占めています。

さらに興味深いのは、「ファクトリー・ガール」という、ツアー後半のヨーロッパ公演で数回しか演奏されなかったレアな楽曲が収録されていることです。この曲は、ミック・ジャガーがビル・ワイマンに「どのアルバムの曲だっけ？」と尋ねるやり取りがそのまま収録されているなど、特別な一枚となっています。他にもエリック・クラプトンがゲスト参加した「リトル・レッド・ルースター」など、聴きどころ満載のアルバムです。

サポートメンバーとしてマット・クリフォードらが参加したことで、60～70年代には演奏不可能だったサイケデリック時代の楽曲なども演奏されています。「黒くぬれ!」では、イントロが始まった瞬間に沸き起こる観客の大歓声が、ストーンズの圧倒的な人気と、このアルバムがバンドにとって大きな転換点であったことを示していると言えるでしょう。

『フラッシュポイント』は、単なるライブアルバムではなく、ローリング・ストーンズというバンドの進化と、時代の変化を反映した、重要な作品です。何度もリマスターされ、現在も多くのファンに愛聴されている理由が、このアルバムを聴けばよく分かります。数多くの名曲が、最高の演奏で収録されている『フラッシュポイント』は、ストーンズのディスコグラフィにおいて、必聴のアルバムと言えるでしょう。

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