マット・クリフォード

マット・クリフォードは、キーボードを中心としたマルチプレイヤーとして知られる実力派ミュージシャンです。映画やテレビ番組の音楽制作にも携わる作曲家としての顔も持ち、その活動は多岐に渡ります。

彼のキャリアは、1970年代後半に、プログレッシブ・ロック界の巨匠、リック・ウェイクマンのツアーサポートメンバーとしてスタートしました。ウェイクマンの側近として、彼の音楽活動に深く関与した経験は、クリフォードの音楽的成長に大きな影響を与えたことは間違いありません。

1986年には、スティーヴ・ハウらが出演するスーパーグループ、GTRのライブメンバーに抜擢されます。レコーディングには参加しませんでしたが、ライブパフォーマンスでその存在感を示し、GTRの歴史に名を刻みました。GTRのライブ映像作品には、クリフォードの姿が収められています。

その後、1989年には、スティーヴ・ハウが参加したスーパーグループ、アンダーソン・ブラッフォード・ウェイクマン・ハウ(ABWH)のサポートメンバーとして参加します。このプロジェクトでは、ジョン・アンダーソンによるプリプロダクション段階でキーボードを担当。しかし、最終的にはリック・ウェイクマンが多くのパートを演奏することになり、完成したアルバム『閃光』では、約7割がウェイクマン、残りの約3割がクリフォードの演奏となっています。それでも、例えば「TEAKBOIS」の金管楽器風のソロパートはクリフォードによる演奏であるなど、彼の貢献はABWHの音楽に色濃く反映されています。ABWHのメイキング映像作品にもクリフォードの姿は記録されています。

1989年から1990年にかけては、世界的ロックバンド、ローリング・ストーンズのワールドツアー「Steel Wheels World Tour」に参加。アルバム『スティール・ホイールズ』のレコーディングにも参加し、1990年の初来日公演では東京ドームのステージに立ちました。ツアーでは「You Can't Always Get What You Want」でフレンチホルンも担当するなど、その活動は演奏にとどまらず多岐にわたりました。当初はABWHのツアーにも参加予定でしたが、ローリング・ストーンズのツアーとの兼ね合いで実現せず、代わりにジュリアン・コルベックがABWHのツアーに参加することとなりました。

ローリング・ストーンズとの関係はその後も続き、ミック・ジャガーのソロアルバム『ゴッデス・イン・ザ・ドアウェイ』（2001年）では数曲でクレジットされ、2005年のローリング・ストーンズのアルバム『ア・ビガー・バン』では2曲で演奏とプロデュースを担当しています。

さらに、クリフォードは映画音楽の世界でも才能を発揮しています。1985年のホラー映画『バタリアン』のサウンドトラック制作にも携わり、映画音楽作家としての側面も持ち合わせています。

このように、マット・クリフォードは、プログレッシブ・ロックからハードロック、そしてポップミュージックまで、幅広いジャンルを横断するミュージシャン、作曲家として、数々のビッグネームとの共演を果たし、音楽業界に大きな足跡を残しています。彼の演奏は、多くの音楽ファンの心に響き、これからも音楽シーンを彩り続けることでしょう。

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