フランキー・ランドール(Frankie Randall、
1961年9月25日 -
2020年12月23日)は、
アメリカ合衆国アラバマ州バーミングハム出身の
プロボクサーです。彼のキャリアは、特に
1994年に達成した歴史的な偉業によって、
ボクシングファンに深く記憶されています。
ランドールがプロのリングに立ったのは
1981年6月25日のこと。地道に経験を重ね、世界タイトル戦線に名を連ねる存在へと成長していきました。
彼の
ボクシング人生最大のハイライトは、間違いなく
1994年1月29日に行われたWBC世界ジュニアウェルター級タイトルマッチでしょう。この試合で、彼は当時の絶対王者、
フリオ・セサール・チャベスに挑みました。チャベスは当時、プロデビュー以来89勝1分という驚異的な無敗記録を誇り、まさにメキシコの英雄として君臨していました。誰もがチャベスの優位を疑わない中、ランドールは果敢に攻め込み、なんとチャベスのプロキャリアで初めてとなるダウンを奪ってみせたのです。この衝撃的なシーンに続き、ランドールはチャベスの鉄壁と思われた防御を崩し続け、12ラウンドの激闘の末、判定勝利を収めました。この勝利により、チャベスの90戦無敗という驚異的な記録はストップし、ランドールは
ボクシング界にその名を轟かせました。
チャベスとの歴史的な一戦で世界王座を獲得したランドールでしたが、その初防衛戦は早くも因縁の相手、チャベスとの再戦となりました(
1994年5月7日)。このリマッチは激しい展開となりましたが、結果は8回負傷判定での敗北となり、ランドールは惜しくも王座から陥落しました。
しかし、彼はそこで立ち止まりませんでした。同年9月17日、今度はWBA世界ジュニアウェルター級チャンピオンであった
ファン・マルチン・コッジに挑戦し、12回判定の末に勝利。再び世界王座を獲得しました。このWBA王座を2度防衛したランドールですが、
1996年1月13日に行われたコッジとの再戦で4回負傷判定負けを喫し、再び王座を失います。しかし、不屈の闘志を持つランドールは、同年8月16日に再びコッジに挑み、12回判定勝ちで王座に返り咲くという劇的な展開を演じました。しかし、この試合後にはドーピング検査で
コカインなどが検出されたという発表があり、彼のキャリアに影を落とす出来事となりました。
WBA王座に返り咲いたランドールでしたが、1997年1月11日の初防衛戦でカル・ライリーに11回TKO負けを喫し、これが彼にとって最後の世界王座戦となりました。その後もリングに上がり続けましたが、キャリア終盤にはかつての輝きに陰りが見え始め、
アントニオ・マルガリートや
ホセ・アントニオ・リベラといった選手に敗れます。そして、
2004年5月22日には、伝説的なライバルである
フリオ・セサール・チャベスとの三度目の対戦、いわゆる「
ラバーマッチ」が実現しましたが、10回判定で敗れました。ランドールは
2005年7月15日の試合を最後に、長きにわたる
プロボクサーとしてのキャリアに終止符を打ちました。
引退後、フランキー・ランドールは
ボクシング人生の影響とされる
慢性外傷性脳症(CTE)や
パーキンソン病といった病と闘いました。そして、
2020年12月23日、
テネシー州モリスタウンにある生活支援施設にて、59歳でその波乱に満ちた生涯を終えました。彼の名前は、
フリオ・セサール・チャベスの不敗神話を打ち破ったボクサーとして、
ボクシング史に永遠に刻まれています。