フランク・ジョーブ

フランク・ジョーブ：野球選手の救世主、トミー・ジョン手術の父

フランク・ジョーブ (1925年7月16日 - 2014年3月6日) は、アメリカ合衆国ノースカロライナ州出身の整形外科医です。彼は、野球界、ひいてはスポーツ医学の歴史に革命を起こした人物として知られています。その名は、数多くの野球選手を深刻な故障から救い出した画期的な手術法、「トミー・ジョン手術」に深く結びついています。

ジョーブは1964年からメジャーリーグベースボール（MLB）のロサンゼルス・ドジャースの医療コンサルタントを務めていました。長年の経験の中で、彼は野球選手の肩や肘の故障に深く関わり、その治療法の限界に直面することになります。この経験が、彼を画期的な手術の開発へと駆り立てました。

1974年、当時ドジャースの投手だったトミー・ジョンは、左腕の靭帯を断裂するという深刻な怪我を負います。当時の医学では、この怪我からの復帰はほぼ不可能だと考えられていました。しかし、ジョーブは、独自のアイデアに基づいて、患者の腱を自家移植する画期的な手術を考案しました。この手術は、それまでの常識を覆すものでした。

そして、ジョーブはトミー・ジョンに対してこの手術を実施。結果は驚くべきものでした。ジョンは手術後見事に復活し、メジャーリーグで活躍を続けました。この成功をきっかけに、「トミー・ジョン手術」は世界中に広まり、多くの野球選手がその恩恵を受けることとなります。

日本においても、数多くのプロ野球選手が「トミー・ジョン手術」を受け、そのキャリアを継続しています。村田兆治、荒木大輔、桑田真澄、近藤真一、松坂大輔、ダルビッシュ有、大谷翔平、藤川球児、和田毅、五十嵐亮太など、多くのスター選手がジョーブの手術によって再生を果たしました。中には、手術は受けなかったものの、ジョーブの診察を受けた選手もいます。立浪和義は、1989年に右肩を痛め、ジョーブの診察を受けています。

さらに、ジョーブの卓越した技術は、野球以外のスポーツにも及んでいました。1988年、プロ野球選手吉村禎章は、試合中に左膝の靭帯を3本断裂するという、当時としては前例のない大怪我を負いました。ジョーブは吉村の手術も執刀し、その際に「野球選手でこんな大けがは見たことがない」と語ったと伝えられています。このエピソードからも、ジョーブがいかに多くの選手を救済してきたかが分かります。

ジョーブは2014年3月6日、カリフォルニア州サンタモニカで88歳で亡くなりました。彼の死は、野球界だけでなく、世界中のスポーツ医学界に大きな衝撃を与えました。しかし、彼の開発した「トミー・ジョン手術」は、これからも多くの選手を救い続け、彼の偉大な功績は永遠に語り継がれていくでしょう。

日本では、ジョーブの高い医療技術と功績から、彼の名前を捩った「ダイジョーブ博士」という架空の人物が、漫画『THE MOMOTAROH』、ゲーム『実況パワフルプロ野球』、特撮テレビドラマ『美少女仮面ポワトリン』などに登場するなど、彼の知名度は非常に高いです。これは、彼が日本の野球界に与えた影響の大きさを示す一例と言えるでしょう。

フランク・ジョーブは、単なる整形外科医ではありませんでした。彼は、多くの野球選手、そしてスポーツ界全体に大きな貢献をした、真のパイオニアであったと言えるでしょう。彼の功績は、これからもスポーツ医学の発展に大きく貢献し続けることでしょう。

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