トミー・ジョン

トマス・エドワード・ジョン・ジュニア：不屈の魂と「トミー・ジョン手術」のパイオニア

トマス・エドワード・ジョン・ジュニア、通称トミー・ジョンは、1943年 5月22日、アメリカ・インディアナ州で生まれました。彼は、プロ[[野球選手]]として26年間活躍し、通算288勝を挙げた名投手です。特に、彼が受けた側副靭帯再建手術、通称「トミー・ジョン手術」は、その後の野球界に大きな影響を与えました。

プロ入りとインディアンス時代

1961年、クリーブランド・インディアンスに入団したジョンは、1963年9月6日に20歳という若さでメジャーデビューを果たします。しかし、最初の2年間は0勝2敗、2勝9敗と苦戦しました。この時期は、まだ彼の才能が完全に開花する前でした。

ホワイトソックス時代

1965年、ジョンはシカゴ・ホワイトソックスへ移籍します。この移籍が、彼のキャリアを大きく変えることとなります。移籍初年度の1965年には14勝7敗を挙げると、翌1966年も14勝10敗と、2年連続でリーグ最多の完封を記録。ホワイトソックスには7シーズン在籍し、1968年にはMLBオールスターゲームに初選出。1969年を除いて、毎年二桁勝利を挙げる活躍を見せました。

ドジャース時代

1971年オフ、ジョンはロサンゼルス・ドジャースへ移籍します。移籍初年度の1972年には11勝5敗、1973年には16勝7敗を記録し、勝率.696はナショナルリーグ1位となりました。1974年もシーズン途中まで13勝3敗と好調を維持していましたが、7月17日の試合で左肘の腱を断裂する大怪我に見舞われます。当時、選手生命はおろか日常生活にも支障をきたす可能性すらあると診断され、再起は絶望視されました。

しかし、ここでジョンは運命的な出会いを果たします。ドジャースのチームドクターだったフランク・ジョーブ博士が考案した、損傷した靱帯を切除し、他の正常な腱の一部を移植するという画期的な手術を受けたのです。この手術こそが、後に「トミー・ジョン手術」と呼ばれるようになります。

1年以上のブランクを経て、1976年4月16日にメジャー復帰を果たしたジョンは、その年に207イニングを投げ10勝10敗、防御率3.09を記録し、カムバック賞、ハッチ賞を受賞。1977年には自身初の20勝を記録し、1978年も17勝を挙げるなど、見事な復活劇を演じました。

ヤンキース時代

1979年、ジョンはニューヨーク・ヤンキースへ移籍。ここでは、2年連続20勝以上を記録するなど、手術の影響を全く感じさせない快投を披露。ジョンの復活劇がきっかけとなり、ジョーブ博士が考案した腱移植手術は「トミー・ジョン手術」と呼ばれるようになりました。1981年にはリーグ優勝を果たし、ワールドシリーズに進出するも、古巣ドジャースに敗れます。

エンゼルス時代とその後

1982年、ジョンはカリフォルニア・エンゼルスへ移籍します。移籍後も安定した成績を残し、手術からの復帰後、1981年のMLBストライキでシーズンが中断された年を除き、毎年10勝・200イニングを続けていました。しかし、41歳となった1984年には7勝13敗と、成績は下降線を辿ります。1985年にはオークランド・アスレチックスに移籍しますが、この年限りでフリーエージェントとなります。

1986年、ジョンはヤンキースに復帰。このシーズンには、アスレチックスの新人マーク・マグワイアと対戦し、2安打を許しました。ジョンはかつてマグワイアの父が歯科医であった際に受診したことがあり、その際「あなたの息子にヒットを打たれるようなことがあったら引退する時だろう」と語ったといいます。一度はこのシーズン限りで引退を表明しますが、撤回してヤンキースと再契約。1987年には13勝6敗と4シーズンぶりの二桁勝利を記録し、契約延長を果たしました。

1988年7月27日の試合では、「1つの打球で3失策」という珍しい記録も作っています。9勝8敗を記録したこのシーズン終了後、一旦解雇されますが、1989年2月に再契約。7シーズンぶりに開幕投手に起用されますが、2勝7敗の成績で、シーズン途中に引退しました。

ジョンは、フィル・ニークロの引退後、メジャーリーグ最年長選手となりました。彼の実働年数26シーズンは、当時のメジャータイ記録でしたが、後にノーラン・ライアンに更新されます。

引退後

引退後、ジョンは2006年12月に独立リーグ・アトランティックリーグのブリッジポート・ブルーフィッシュの監督に就任しました。

詳細情報

- MLBオールスターゲーム選出： 4回 (1968年, 1977年, 1978年, 1979年)
- 最高勝率： 2回 (1973年, 1974年)
- 実働年数： 26年 (歴代3位タイ)
- 通算勝利数： 288勝 (歴代26位、左腕投手では歴代7位)
- 通算投球回： 4710.1回 (歴代20位、左腕投手では歴代3位)

トミー・ジョンは、その不屈の精神と、医療技術の進歩によって、野球界に大きな足跡を残しました。彼の名前は、「トミー・ジョン手術」とともに、永遠に語り継がれるでしょう。

もう一度検索